新しい素材を用いた唾液採取器具による唾液中のコチニン,コルチゾール,デヒドロエピアンドロステロン及びテストステロンの測定
「要旨」 筆者らはポリプロピレンとポリエチレンの重合体を素材とした唾液採取器具(サリソフト(R)及びサリキッズ(R))を考案した(登録3138944号). 第1に本器具に用いている吸収体の吸収量やpHへの影響を確認するための実験を行った. 吸収量は, 精製水2mL中に1分間浸した時には1.58±0.02mL(平均値±標準偏差)(N=20)であった. また, 口腔内に1分間入れた時の唾液採取量は, 1.28±0.13mL(N=6)で, 分析に供する充分な唾液が得られた. pHは0.1M重炭酸ナトリウム溶液(pH8.7)及び0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いて, 吸収体を通過させた...
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Published in | 日本衛生学雑誌 Vol. 64; no. 4; pp. 811 - 816 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人日本衛生学会
2009
日本衛生学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0021-5082 1882-6482 |
DOI | 10.1265/jjh.64.811 |
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Summary: | 「要旨」 筆者らはポリプロピレンとポリエチレンの重合体を素材とした唾液採取器具(サリソフト(R)及びサリキッズ(R))を考案した(登録3138944号). 第1に本器具に用いている吸収体の吸収量やpHへの影響を確認するための実験を行った. 吸収量は, 精製水2mL中に1分間浸した時には1.58±0.02mL(平均値±標準偏差)(N=20)であった. また, 口腔内に1分間入れた時の唾液採取量は, 1.28±0.13mL(N=6)で, 分析に供する充分な唾液が得られた. pHは0.1M重炭酸ナトリウム溶液(pH8.7)及び0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いて, 吸収体を通過させた後の溶液のpHを測定した. 通過させた後のpHはpH8.7溶液ではpH8.7(N=5), pH6.0溶液はpH6.0±0.1(N=5)であった. 第2に, 本器具の吸収体を用いて処理した唾液中のコチニン(以下Cotinine), コルチゾール(以下Cortisol), デヒドロエピアンドロステロン(Dehydroepiandrosterone;以下DHEA)及びテストステロン(以下Testosterone)の測定を行った. また, 唾液pH測定も行った. 比較対象として流涎唾液及びサリベットコットン通過唾液の測定も同時に行った. 唾液は男性12名(31.5±17.1歳)から得た. その結果, CotinineとCortisolの測定値には3者間に有意な差は見られなかった. また3者間の級内相関係数(Intraclass correlation coefficient;以下ICC)は, CotinineがICC(2,3)=0.995, CortisolがICC(2,3)=0.994で再現性のある結果が得られた. しかし, DHEA及びTestosteroneでは, サリソフト(R)を用いた唾液と流涎唾液では測定値に有意な差はなく, 相関係数はDHEAでは0.984, Testosteroneでは0.960であったが, サリベットコットン唾液では流涎唾液よりもTestosterone濃度が約1.9倍高く, ICC(2,3)=0.521であった. DHEAにおいては, 測定範囲の上限(1,000pg/mL)を超える結果となり, 濃度計算ができなかった. また, pHは流涎唾液で7.9±0.6, サリソフト(R)唾液では7.9±0.6でpHに有意差はなく, 相関係数は0.975であった. サリベットコットン唾液は6.4±0.8で, 唾液pHが有意に低下し, 3者間においてはICC(2,3)=0.634であった. 以上の結果からポリプロピレンとポリエチレンの重合体を素材とした吸収体を用いた唾液採取器具サリソフト(R)は, 唾液が充分に採取でき, 唾液pHの変動に影響を及ばさず, 唾液中のCotinineやCortisol等のステロイドホルモン等の測定に適していることが示された. |
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ISSN: | 0021-5082 1882-6482 |
DOI: | 10.1265/jjh.64.811 |