水俣病の疫学~病像のとらえ方を中心に

「はじめに」水俣病の病像をめぐって果てのない論争が続いている. これには臨床医学者のみならず, 疫学者も関与している. いずれにしても, 水俣病には昭和30年代から40年代初頭にみられる急性劇症型を中心とした病像から, 40年代全般を中心にした慢性期遅発性期そして以後の後遺症期と歴史的変遷がある. 水俣病といえば様々な映像を中心に急性期の病像の悲劇的なイメージが余りにも強く, その残像が現在の姿として所謂, 幻想とでもいえる感覚を与えているともいえる. 多くの疾患には潜在(伏)期から急性期, 慢性期ないし回復期, 場合によっては後遺症期と進展するのが通常であり, 水俣病もその例外ではない. 水...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 70; no. 3; pp. 271 - 276
Main Author 二塚, 信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本衛生学会 2015
日本衛生学会
Subjects
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ISSN0021-5082
1882-6482
DOI10.1265/jjh.70.271

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Summary:「はじめに」水俣病の病像をめぐって果てのない論争が続いている. これには臨床医学者のみならず, 疫学者も関与している. いずれにしても, 水俣病には昭和30年代から40年代初頭にみられる急性劇症型を中心とした病像から, 40年代全般を中心にした慢性期遅発性期そして以後の後遺症期と歴史的変遷がある. 水俣病といえば様々な映像を中心に急性期の病像の悲劇的なイメージが余りにも強く, その残像が現在の姿として所謂, 幻想とでもいえる感覚を与えているともいえる. 多くの疾患には潜在(伏)期から急性期, 慢性期ないし回復期, 場合によっては後遺症期と進展するのが通常であり, 水俣病もその例外ではない. 水俣病の診断基準にはいくつかの変遷があるが, 現在昭和52年の環境庁(当時)による判断条件が用いられており, その正当性をめぐって特に多くの裁判で法的妥当性が問われ, その過程で少なからぬ医学者が関与せざるを得ない状況が今に至るも続いている.
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.70.271