肝硬変患者に対する肝疾患専門医療機関の早期介入の有効性

肝硬変に対する治療法は進歩しており,個々の病態に応じた治療法の適切な選択と実施のため,専門医の介入と診療連携の促進はますます重要となっている.今回,肝硬変患者に対する専門医(専門医療機関)介入の有効性を明らかとするため,山口大学医学部附属病院消化器内科を受診した肝硬変患者について,その受診背景や介入後の無イベント生存期間やChild-Pughスコア等の臨床経過を検討した.肝硬変の症状出現前に当科を受診した症例を早期介入群,症状出現後に受診した症例を晩期介入群と設定した.前者ではC型肝炎ウイルスの成因割合が高く,肝機能異常や既知の肝硬変の精査を目的とした受診が多い一方,後者ではアルコール性の割合...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in山口医学 Vol. 66; no. 3; pp. 163 - 168
Main Authors 久永, 拓郎, 日髙, 勲, 石川, 剛, 岩本, 拓也, 丸本, 芳雄, 高見, 太郎, 前田, 雅喜, 山﨑, 隆弘, 佐伯, 一成, 坂井田, 功, 松本, 俊彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 01.08.2017
Online AccessGet full text
ISSN0513-1731
1880-4462
DOI10.2342/ymj.66.163

Cover

More Information
Summary:肝硬変に対する治療法は進歩しており,個々の病態に応じた治療法の適切な選択と実施のため,専門医の介入と診療連携の促進はますます重要となっている.今回,肝硬変患者に対する専門医(専門医療機関)介入の有効性を明らかとするため,山口大学医学部附属病院消化器内科を受診した肝硬変患者について,その受診背景や介入後の無イベント生存期間やChild-Pughスコア等の臨床経過を検討した.肝硬変の症状出現前に当科を受診した症例を早期介入群,症状出現後に受診した症例を晩期介入群と設定した.前者ではC型肝炎ウイルスの成因割合が高く,肝機能異常や既知の肝硬変の精査を目的とした受診が多い一方,後者ではアルコール性の割合が高く,胃食道静脈瘤出血や肝不全症状出現により受診する症例が多かった.また前者は無イベント生存期間が有意に長く,診断時のChild-Pughスコアが低値で,かつ以後も長期間維持された.一方,後者では診断時のスコアが高く,介入開始後に一定期間は改善を認めるが長期持続せず,その効果は限定的であった.肝硬変患者に対する専門医療機関の介入は有効であるが,予後改善のためには症状出現前のより早期からの介入が必要であり,患者紹介の促進等の診療連携体制の強化が今後も重要である.また,晩期介入例でも一定の効果は得られるが,将来の再増悪を想定して移植や身障者手帳交付の検討など関係各所と連携を進めることが重要である.
ISSN:0513-1731
1880-4462
DOI:10.2342/ymj.66.163