去勢肥育牛における尿路閉塞と膀胱破裂の鑑別と膀胱カテーテル留置後の予後判定のための臨床症状および血液性状の比較検討
去勢肥育牛における尿路閉塞と膀胱破裂の鑑別のための臨床症状および血液性状の特徴,膀胱破裂の予後判定のために治癒群と死亡群の相違を明らかにする目的で研究を行った.供試牛は尿閉により尿道造瘻術を行った黒毛和種去勢肥育牛18頭で,腹部超音波検査と膀胱内視鏡検査から尿路閉塞群(8頭)および膀胱破裂群(10頭)に分類し,正常対照群20頭と比較した.膀胱破裂に対する処置として,膀胱カテーテルの留置,腹水の除去,腹腔へ抗生剤(アンピシリンとクロキサシリン合剤4g)を添加した生理食塩水注入および術後は食欲が回復するまで酢酸リンゲル液を主とした輸液(5~10ℓ)と前述の抗生剤投与 (4g/日) を実施した.膀胱...
Saved in:
Published in | 産業動物臨床医学雑誌 Vol. 3; no. 1; pp. 13 - 20 |
---|---|
Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
30.06.2012
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1884-684X 2187-2805 |
DOI | 10.4190/jjlac.3.13 |
Cover
Summary: | 去勢肥育牛における尿路閉塞と膀胱破裂の鑑別のための臨床症状および血液性状の特徴,膀胱破裂の予後判定のために治癒群と死亡群の相違を明らかにする目的で研究を行った.供試牛は尿閉により尿道造瘻術を行った黒毛和種去勢肥育牛18頭で,腹部超音波検査と膀胱内視鏡検査から尿路閉塞群(8頭)および膀胱破裂群(10頭)に分類し,正常対照群20頭と比較した.膀胱破裂に対する処置として,膀胱カテーテルの留置,腹水の除去,腹腔へ抗生剤(アンピシリンとクロキサシリン合剤4g)を添加した生理食塩水注入および術後は食欲が回復するまで酢酸リンゲル液を主とした輸液(5~10ℓ)と前述の抗生剤投与 (4g/日) を実施した.膀胱破裂群では食欲廃絶,第一胃運動の低下,無尿および下痢が全例でみられ,直腸検査において膀胱は緊張あるいは弛緩していた.正常対照群に比べて尿路閉塞群では血漿総蛋白質 (TP) および総ビリルビン (T.Bil) の有意な高値が,また血漿無機リン (iP) の有意な低値がみられた.正常対照群に比べて膀胱破裂群では,赤血球数,Ht値,血漿TP,グルコース,T.Bil,尿素窒素 (UN) およびクレアチニン (Crea) の有意な高値が,また血漿Na,Clおよび血漿iP/UN比の有意な低値がみられた.膀胱破裂の指標として,食欲廃絶,無尿,努責の欠如,下痢,血漿iP/UN比0.15以下,血漿Cl値95mEq/ℓ以下,血漿UN値35mg/dℓ以上,血漿Crea値2.5mg/dℓ以上が示唆された.膀胱破裂群の術後2~6日の血液性状では,死亡例(5/10頭)は治癒例と比較して血漿UNの有意な高値,血漿NaおよびClの有意な低値がみられた.以上から,尿石症の病態把握と膀胱破裂の予後判定において臨床所見とともに,CBC,血漿UN,Creaおよび電解質の測定が有用であることが明らかになった. |
---|---|
ISSN: | 1884-684X 2187-2805 |
DOI: | 10.4190/jjlac.3.13 |