顎関節症と関連病態

顎関節症における疼痛と関連する病態について概説した. 顎関節症の痛みは,咀嚼筋および顎関節から生じ,その病態の発生には,安静時の無意識な上下歯牙の接触による閉口筋の筋緊張が存在していることが多い.この疼痛を寛解させるには,筋のリラックスとストレッチを中心とした行動療法とトリガーポイント注射,物理療法等の併用が推奨されており,三環系抗うつ薬を除く多くの薬物療法ならびにスプリント療法はそのエビデンスが証明されていない.疼痛性疾患は種々分類されるが,顎関節症として扱われる咀嚼筋,顎関節由来の疼痛は深部体性痛に属し,他の顔面の深部組織に由来する疼痛と性質は大きく変わらない. 顎関節症と鑑別を要する病態...

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Published in九州歯科学会雑誌 Vol. 61; no. 6; pp. 157 - 169
Main Authors 今村, 佳樹, 坂本, 英治, 椎葉, 俊司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州歯科学会 2007
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Summary:顎関節症における疼痛と関連する病態について概説した. 顎関節症の痛みは,咀嚼筋および顎関節から生じ,その病態の発生には,安静時の無意識な上下歯牙の接触による閉口筋の筋緊張が存在していることが多い.この疼痛を寛解させるには,筋のリラックスとストレッチを中心とした行動療法とトリガーポイント注射,物理療法等の併用が推奨されており,三環系抗うつ薬を除く多くの薬物療法ならびにスプリント療法はそのエビデンスが証明されていない.疼痛性疾患は種々分類されるが,顎関節症として扱われる咀嚼筋,顎関節由来の疼痛は深部体性痛に属し,他の顔面の深部組織に由来する疼痛と性質は大きく変わらない. 顎関節症と鑑別を要する病態としては,深部体性痛を呈する他の疾患や神経因性疼痛,精神疾患に伴う疼痛がある.深部体性痛を呈する疾患には,咀嚼筋以外の筋痛,一次性頭痛,鼻・上顎洞疾患,骨疾患(骨髄炎),頚椎疾患,頭頸部の自己免疫疾患などがあり,これらの病態には,末梢からの侵害刺激による中枢神経の感作,可塑化が深く関係している.深部体性痛では,二次ニューロンの感作,可塑化に伴って,受容野を共有する部位に関連痛を生じることになり,この関連痛が顎関節症の疼痛を複雑にする.神経因性疼痛としては,発作性神経痛,精神疾患としては,身体表現性障害やうつなどがあげられる.疼痛が発生している組織の病態の理解が重要である.
ISSN:0368-6833
1880-8719
DOI:10.2504/kds.61.157