学齢児童の磁性玩具誤飲による消化管損傷の1例

症例は11歳女児.既往歴.腹痛のため前医を受診し,腹部エックス線写真と腹部単純CTで複数の異物陰影が認められ当院紹介となった.当院で撮影した腹部エックス線写真では右下腹部に10個の連なった異物陰影を認めた.家族からの聴取で約1か月前の磁性玩具(ネオジム磁石)誤飲が疑われた.2日間経過しても腹部エックス線写真で異物陰影の移動がなく,腹部超音波検査で連なる異物は複数腸管に存在するという所見を得たため磁石間圧挫による腸管損傷の可能性を考慮して審査腹腔鏡を行った.術中所見で消化管異物は複数の磁石であり,回腸-上行結腸が磁石で圧挫され内瘻を形成していた.加えて更に口側の回腸にも穿孔を認めた.磁性玩具を摘...

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Published in日本小児外科学会雑誌 Vol. 58; no. 1; pp. 40 - 44
Main Authors 脇坂, 宗親, 古田, 繁行, 大林, 樹真, 川口, 皓平, 北川, 博昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本小児外科学会 20.02.2022
日本小児外科学会
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ISSN0288-609X
2187-4247
DOI10.11164/jjsps.58.1_40

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Summary:症例は11歳女児.既往歴.腹痛のため前医を受診し,腹部エックス線写真と腹部単純CTで複数の異物陰影が認められ当院紹介となった.当院で撮影した腹部エックス線写真では右下腹部に10個の連なった異物陰影を認めた.家族からの聴取で約1か月前の磁性玩具(ネオジム磁石)誤飲が疑われた.2日間経過しても腹部エックス線写真で異物陰影の移動がなく,腹部超音波検査で連なる異物は複数腸管に存在するという所見を得たため磁石間圧挫による腸管損傷の可能性を考慮して審査腹腔鏡を行った.術中所見で消化管異物は複数の磁石であり,回腸-上行結腸が磁石で圧挫され内瘻を形成していた.加えて更に口側の回腸にも穿孔を認めた.磁性玩具を摘出し,瘻孔切除後に縫合閉鎖した.複数の磁石誤飲は重篤な合併症を起こすことを認識し,症状が乏しくても経時的な画像評価を行い,審査腹腔鏡などの外科的治療の適応を検討すべきである.また磁性玩具の形状から発達障害のない学齢児童にも磁石誤飲による腸管損傷が起こる可能性を考慮し,診療を進める必要がある.
ISSN:0288-609X
2187-4247
DOI:10.11164/jjsps.58.1_40