不知火海沿岸地域住民の水俣病補償制度上の位置と日常生活動作能力との関連

「I. 緒言」2004年10月15日の水俣病関西訴訟の最高裁判決後, 熊本・鹿児島の両県で公害健康被害補償法に基づく水俣病認定申請者は, 2008年3月末の時点で約6,000人に上っており, 医療費が支給される保健手帳の受給者は16,000人を超えている. 認定申請者や保健手帳受給者の状況についてはこれまで断片的には報告されているが, 未申請者を含めて地域住民全体がどのような健康状態であるのか, また日常生活においていかなる障害を抱えているのかは明らかにされていない(1). そこで, われわれはかつてメチル水銀に曝露した地域として推定される不知火海沿岸地域の住民を対象に, 健康状態の地域的分布...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 63; no. 4; pp. 699 - 710
Main Authors 牛島, 佳代, 成, 元哲, 川北, 稔, 向井, 良人, 田村, 憲治, 田中, 司朗, 田中, 美加, 丸山, 定巳, 不知火海研究プロジェクト
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本衛生学会 2008
日本衛生学会
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Summary:「I. 緒言」2004年10月15日の水俣病関西訴訟の最高裁判決後, 熊本・鹿児島の両県で公害健康被害補償法に基づく水俣病認定申請者は, 2008年3月末の時点で約6,000人に上っており, 医療費が支給される保健手帳の受給者は16,000人を超えている. 認定申請者や保健手帳受給者の状況についてはこれまで断片的には報告されているが, 未申請者を含めて地域住民全体がどのような健康状態であるのか, また日常生活においていかなる障害を抱えているのかは明らかにされていない(1). そこで, われわれはかつてメチル水銀に曝露した地域として推定される不知火海沿岸地域の住民を対象に, 健康状態の地域的分布とそれらを規定する社会的要因を探るために疫学調査を実施した. こうした社会疫学研究では, 従来の疫学研究において交絡因子としてみなされてきた学歴, 収入, 職業といった社会経済状況(social economic status)を, 健康状態の差異を説明する際の主要な予測因子として注目しており(2), 個人がどのような社会経済状況に位置するかによって, 健康状態が異なることが示されている(3). 以上をふまえて, 本研究では調査対象者の水俣病補償制度上の位置(以下, MD status:Minamata Disease status)が, この地域に特徴的な社会経済状況を示す指標の1つであると仮定し, 不知火海沿岸地域における調査対象者が水俣病に関する補償制度の中でどのような認定ならびに補償給付を受けているか(MD status)ということと健康度との関連を探索した.
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.63.699