12.ステロイド吸入療法が著効したpostintubation tracheal stenosisの1例(第29回 日本呼吸器内視鏡学会九州支部総会)

症例は21歳女性. 2004年11月下旬に大量薬物中毒にて当院救命センターを受診した. 意識低下と呼吸性アシドーシスのため75FrのPortex社製high volume, low pressure cuff typeにて気管内挿管を施行し, 挿管41時間後に抜管した. 抜管3時間後の胸写に異常なく, 第3病日に退院した. 退院7日後より10本/日の喫煙を開始し, 退院29日後に薬物中毒にて再入院した. この際挿管は行わず, 第2病日に呼吸器症状なく退院した. しかし2005年1月上旬から咳嗽, 吸気時の呼吸困難が出現するため, 1月中旬に再来した. stridorを聴取し, 胸写にて気管狭窄...

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Published in気管支学 Vol. 28; no. 7; p. 534
Main Authors 小宮, 幸作, 清川, 寛文, 向笠, 洋介, 本田, 宜久, 海老, 規之, 山本, 英彦, 清田, 雅智
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2006
日本呼吸器内視鏡学会
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Summary:症例は21歳女性. 2004年11月下旬に大量薬物中毒にて当院救命センターを受診した. 意識低下と呼吸性アシドーシスのため75FrのPortex社製high volume, low pressure cuff typeにて気管内挿管を施行し, 挿管41時間後に抜管した. 抜管3時間後の胸写に異常なく, 第3病日に退院した. 退院7日後より10本/日の喫煙を開始し, 退院29日後に薬物中毒にて再入院した. この際挿管は行わず, 第2病日に呼吸器症状なく退院した. しかし2005年1月上旬から咳嗽, 吸気時の呼吸困難が出現するため, 1月中旬に再来した. stridorを聴取し, 胸写にて気管狭窄に気付いた. 2月上旬に気管支内視鏡検査を施行したところ, 気管粘膜に発赤と血管拡張を伴う全周性の気管狭窄を認めた. 結核を含む細菌培養は陰性であり, 胸写上挿管チューブのカブに一致した狭窄であったためpostintubation tracheal stenosisと診断した. 治療としてプロピオン酸ベクロメタゾンの吸入及び禁煙指導を行い, 2月中旬には症状, 胸写, 気管支鏡所見ともに改善した. postintubation tracheal stenosisの頻度は1~2%と推定され, 2週間以上の挿管歴がある例に生じやすいとされている. ステロイドの全身投与は無効とされ, ステロイドの吸入療法の報告は検索した範囲ではみられず, 一般には狭窄部の手術療法が行われる. 本例は短時間の挿管時間で引き起こされたpostintubation tracheal stenosisと考えられ, ステロイド吸入療法が有効であったと思われた.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.28.7_534_3