北海道稚内市抜海港および焼尻島の2003年から2009年におけるゴマフアザラシの個体数変動

北海道日本海側に位置する稚内市抜海港と焼尻島において,2003年から2009年までの期間,ゴマフアザラシの確認個体数の季節変動や年変動について調べた.抜海港と焼尻島における本種の確認個体数は6年間で年々増加傾向にあったが,抜海港はより高い増加傾向を示した.このような上陸場間の増加傾向の差は,上陸可能面積によることが示唆された.また,2つの上陸場における確認個体数の季節変動は異なり,主に抜海港は個体数のピークが冬期に1回,焼尻島は冬期と春期の計2回見られた.また,両上陸場の確認開始時期はオホーツク海あるいは間宮海峡の海氷が形成され始める時期,最終退去時期は海氷が退去・消失する時期と一致していた....

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Published in哺乳類科学 Vol. 56; no. 2; pp. 179 - 188
Main Authors 河野, 康雄, 伊東, 幸, 小林, 万里, 加藤, 美緒
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本哺乳類学会 2016
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Summary:北海道日本海側に位置する稚内市抜海港と焼尻島において,2003年から2009年までの期間,ゴマフアザラシの確認個体数の季節変動や年変動について調べた.抜海港と焼尻島における本種の確認個体数は6年間で年々増加傾向にあったが,抜海港はより高い増加傾向を示した.このような上陸場間の増加傾向の差は,上陸可能面積によることが示唆された.また,2つの上陸場における確認個体数の季節変動は異なり,主に抜海港は個体数のピークが冬期に1回,焼尻島は冬期と春期の計2回見られた.また,両上陸場の確認開始時期はオホーツク海あるいは間宮海峡の海氷が形成され始める時期,最終退去時期は海氷が退去・消失する時期と一致していた.本種の性成熟個体は繁殖期に海氷域へ移動し滞在していると推察されることから,焼尻島は春期の未成熟個体の上陸場として利用されていることが予想される.これらのことから,両上陸場は主に繁殖期前の冬期の上陸場として利用されていること,焼尻島においては未成熟個体によって春期の上陸場としても利用されていることが示唆された.
ISSN:0385-437X
1881-526X
DOI:10.11238/mammalianscience.56.179