近赤外光によりコントロールできる薬物の放出システム

「1. はじめに」 波長700nmから900nmの近赤外域はヘモグロビン等の有色タンパク質と水の吸収バンドに挟まれた領域で, 可視光や紫外光に比べて生体組織への透過性が高い. 1)したがって, 光線力学療法や蛍光バイオイメージングといった光を使った治療や診断にはこの近赤外光が好ましい. 現在, 近赤外域に吸収を持つ光増感剤や蛍光色素の開発が盛んに行われているが, 棒状の金ナノ粒子である金ナノロッドも近赤外域に強い吸収を持つ金属ナノ材料として知られている. 2)また, 金ナノロッドは吸収した光エネルギーを熱に変換するフォトサーマル効果を示し, この熱を利用したがんの温熱治療に関する研究が以前から...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 133; no. 3; pp. 369 - 372
Main Author 新留, 琢郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.03.2013
日本薬学会
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Summary:「1. はじめに」 波長700nmから900nmの近赤外域はヘモグロビン等の有色タンパク質と水の吸収バンドに挟まれた領域で, 可視光や紫外光に比べて生体組織への透過性が高い. 1)したがって, 光線力学療法や蛍光バイオイメージングといった光を使った治療や診断にはこの近赤外光が好ましい. 現在, 近赤外域に吸収を持つ光増感剤や蛍光色素の開発が盛んに行われているが, 棒状の金ナノ粒子である金ナノロッドも近赤外域に強い吸収を持つ金属ナノ材料として知られている. 2)また, 金ナノロッドは吸収した光エネルギーを熱に変換するフォトサーマル効果を示し, この熱を利用したがんの温熱治療に関する研究が以前から行われてきた. 3, 4)金ナノ粒子は表面修飾が容易であり, その形状により分光特性が異なる. したがって, 金ナノロッドに様々な機能を持たせ, 異なる分光特性の金ナノ粒子を組み合わせることで, 高次元の機能を持たせることが可能になる.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.12-00239-3