8.抗凝固療法中の気道出血に対し気道バルーンとトロンビン,ベリプラスト^[○!R]散布が有効であった1例(第31回 日本呼吸器内視鏡学会北海道支部会)
症例は53歳女性. 劇症型心筋炎後重症心不全により人工補助心臓が埋め込まれており, ワーファリン, バイアスピリンによる抗凝固療法を必要としていた. 2009年1月中旬に喀血とそれに伴う急性呼吸不全が出現. 直ちに人工呼吸管理の下で気管支鏡検査を施行したところ, 右気管支が血餅でほぼ完全に閉塞していた. 血餅を除去すると右中葉入口部に小さな粘膜欠損部位があり, 同部位からの出血を認めていた. アルゴンプラズマコアギュレーションによる止血は全く効果がなかったが, 同部位をバルーンで圧迫しながら末梢側にトロンビンを散布したところ止血を得た. 術前, 術後の胸部CT所見より気管支拡張症による出血と診...
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Published in | 気管支学 Vol. 32; no. 1; p. 82 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
2010
日本呼吸器内視鏡学会 |
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Summary: | 症例は53歳女性. 劇症型心筋炎後重症心不全により人工補助心臓が埋め込まれており, ワーファリン, バイアスピリンによる抗凝固療法を必要としていた. 2009年1月中旬に喀血とそれに伴う急性呼吸不全が出現. 直ちに人工呼吸管理の下で気管支鏡検査を施行したところ, 右気管支が血餅でほぼ完全に閉塞していた. 血餅を除去すると右中葉入口部に小さな粘膜欠損部位があり, 同部位からの出血を認めていた. アルゴンプラズマコアギュレーションによる止血は全く効果がなかったが, 同部位をバルーンで圧迫しながら末梢側にトロンビンを散布したところ止血を得た. 術前, 術後の胸部CT所見より気管支拡張症による出血と診断した. その後, 4月下旬に再び喀血が起こった. 気管支鏡では前回と異なり, 左B 8末梢からの出血が主体であった. 左B 8a, B 8bをEndobronchial Watanabe Spigot(EWS)を用いて気管塞栓しようと試みたが, B 8b側への挿入困難のため同部位に前回同様バルーンからのトロンビンの散布も施行し止血した. さらに左上葉入口部の粘膜から滲み出る出血があり, 咳嗽, 低酸素の原因として続いた. 同部位の血餅を除去し, バルーンの末梢からトロンビンの散布を行ったが十分な止血効果が得られず, 最後はバルーンの末梢からフィブリン糊(ベリプラスト(R)P)の散布を行い止血に至った. その後, 気道出血はコントロールされていたが, 5月下旬脳梗塞により死亡した. 抗凝固療法を中止できない状況で極めてコントロール困難な気道出血を呈した症例に関する我々の経験を報告する. |
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ISSN: | 0287-2137 2186-0149 |
DOI: | 10.18907/jjsre.32.1_82_1 |