中型哺乳類における錯誤捕獲の現状と課題
近年,錯誤捕獲への懸念が示されてきたが,鳥獣保護管理法ではその報告義務がなく,行政による捕獲従事者の管理もないため実態は不明である.鳥獣行政体制を刷新し,捕獲情報を詳細に把握し始めた小諸市では,中型食肉目の錯誤捕獲が総捕獲数の29.8~53.0%を占め,殺処分につながっていた.4年間の錯誤捕獲842頭のうち,中型食肉目は608頭(72.2%)で,そのほとんどがくくりわなによるもので,殺処分されていた(551頭,90.6%).また,くくりわなによる個体の損傷も大きかった.狩猟鳥獣となっている中型哺乳類は有害捕獲の許可を得ていればくくりわなで捕獲し殺処分しても違法とならないこと,殺処分する方が作業...
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Published in | 哺乳類科学 Vol. 60; no. 2; pp. 359 - 366 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本哺乳類学会
2020
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0385-437X 1881-526X |
DOI | 10.11238/mammalianscience.60.359 |
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Summary: | 近年,錯誤捕獲への懸念が示されてきたが,鳥獣保護管理法ではその報告義務がなく,行政による捕獲従事者の管理もないため実態は不明である.鳥獣行政体制を刷新し,捕獲情報を詳細に把握し始めた小諸市では,中型食肉目の錯誤捕獲が総捕獲数の29.8~53.0%を占め,殺処分につながっていた.4年間の錯誤捕獲842頭のうち,中型食肉目は608頭(72.2%)で,そのほとんどがくくりわなによるもので,殺処分されていた(551頭,90.6%).また,くくりわなによる個体の損傷も大きかった.狩猟鳥獣となっている中型哺乳類は有害捕獲の許可を得ていればくくりわなで捕獲し殺処分しても違法とならないこと,殺処分する方が作業者にとって安全で報奨金が得られる場合があることが,錯誤捕獲個体の殺処分につながっている.錯誤捕獲の実態を明らかにし,捕獲方法,生態系,個体への影響について,科学的側面,倫理的側面から議論する必要がある. |
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ISSN: | 0385-437X 1881-526X |
DOI: | 10.11238/mammalianscience.60.359 |