飼育個体の観察から何がわかるか?:サル,イルカ,マメジカ,サイの事例から

「はじめに」テレメトリーやデータロガーなど最近の研究技術の発達により, 野生哺乳類, 特に大型哺乳類に関して, これまで得られなかった情報が大量に得られるようになったため, もう飼育個体の研究は重要でないと考えられているかもしれない. しかし飼育個体でもできる研究また飼育個体でないとできない研究はまだまだ多い. いやむしろ, 近年発達した研究技術を十分に生かして野生動物研究を新たな段階に進めるためには, 飼育個体の研究が今後ますます重要になるだろうと我々は考えている. 飼育個体を研究に利用する利点は, いずれも野生個体では困難な以下の3点に要約できる. (1)形態や行動, 生理の詳細な分析が可...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in哺乳類科学 Vol. 48; no. 1; pp. 159 - 167
Main Authors 幸島, 司郎, 小林, 洋美, 久世, 濃子, 関口, 雄祐, 荒井, 一利, 酒井, 麻衣, 岩崎, 真里, 松林, 尚志, 喜安, 薫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本哺乳類学会 2008
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:「はじめに」テレメトリーやデータロガーなど最近の研究技術の発達により, 野生哺乳類, 特に大型哺乳類に関して, これまで得られなかった情報が大量に得られるようになったため, もう飼育個体の研究は重要でないと考えられているかもしれない. しかし飼育個体でもできる研究また飼育個体でないとできない研究はまだまだ多い. いやむしろ, 近年発達した研究技術を十分に生かして野生動物研究を新たな段階に進めるためには, 飼育個体の研究が今後ますます重要になるだろうと我々は考えている. 飼育個体を研究に利用する利点は, いずれも野生個体では困難な以下の3点に要約できる. (1)形態や行動, 生理の詳細な分析が可能であること, (2)多種間での比較が容易にできること, (3)実験的操作ができることである. 我々はこれまで, これらの利点を生かして, 野生個体の直接観察などのフィールドワークだけでなく, 動物園や水族館で飼育されている様々な哺乳類個体を対象に, 霊長類(Primate)の目の外部形態比較(サルの目の形態の意味とヒトの目の特殊性), オランウータンの顔形態の成長による変化(視覚コミュニケーションとの関連), イルカやシャチの休息・睡眠行動(どうやって寝ているのか?)及び接触行動(互いにこすり合う意味は?), マメジカの活動日周期(マメジカは夜行性か?), サイの嗅覚行動(においの発信と受信行動, 嗅覚コミュニケーション)などに関する研究を行ってきた.
ISSN:0385-437X
1881-526X
DOI:10.11238/mammalianscience.48.159