頭頸部癌に対するIL-2遺伝子治療の基礎的検討
頭頸部癌への新しい免疫療法を開発する目的で,IL-2遺伝子導入の基礎的検討を行った.ampliconのdefective herpes simplex virusをvectorとしてヒトIL-2遺伝子を,口腔底癌由来のKB細胞に導入した(KB/IL-2).KB/IL-2の培養上清中には高濃度のIL-2の産生がみられ,培養上清を用いてヒト末梢血単核細胞(PBMC)を培養すると,PBMCのKB細胞に対する細胞障害活性は有意に高まった.KB細胞,KB/IL-2細胞,lacZ遺伝子を導入したKB細胞(KB/lacZ)をそれぞれnude mouseに皮下移植した.KB/IL-2細胞移植群のみがマウス血清...
Saved in:
Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 101; no. 6; pp. 799 - 806 |
---|---|
Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
1998
日本耳鼻咽喉科学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
DOI | 10.3950/jibiinkoka.101.6_799 |
Cover
Loading…
Summary: | 頭頸部癌への新しい免疫療法を開発する目的で,IL-2遺伝子導入の基礎的検討を行った.ampliconのdefective herpes simplex virusをvectorとしてヒトIL-2遺伝子を,口腔底癌由来のKB細胞に導入した(KB/IL-2).KB/IL-2の培養上清中には高濃度のIL-2の産生がみられ,培養上清を用いてヒト末梢血単核細胞(PBMC)を培養すると,PBMCのKB細胞に対する細胞障害活性は有意に高まった.KB細胞,KB/IL-2細胞,lacZ遺伝子を導入したKB細胞(KB/lacZ)をそれぞれnude mouseに皮下移植した.KB/IL-2細胞移植群のみがマウス血清中のIL-2濃度,IFN-γ濃度が有意に高値を示した.KB/IL-2細胞移植群マウスから分離した脾臓細胞の細胞障害活性も有意に高値を示した.KB/IL-2細胞移植群(n=5)マウスで5匹のうち3匹は,腫瘍は完全に消失したが,KB/lacZ細胞移植群(n=5)およびKB細胞移植群(n=5)のマウスはすべて120日以内に死亡した. 今回defective HSV系を用いてIL-2遺伝子をKB細胞に導入した結果,高濃度のIL-2が産生されたことが確認された.さらに,KB/IL-2細胞をマウスに皮下移植すると産生されたIL-2によって,NK細胞を中心とした免疫担当細胞が活性化され,IFN-γとの共合作用によって腫瘍を拒絶したと考えられた. |
---|---|
ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.101.6_799 |