当科における一側聴耳の手術症例の検討

対側耳が高度難聴である一側聴耳(only hearing ear)の場合,手術操作に特に慎重を要する.それは鼓室形成術には感音性難聴の危険性が少しながらも存在し,難聴が生じた場合,日常生活において大きなハンディキャップとなりうるためである.今回我々は,1999年4月から2003年3月までの4年間に兵庫医科大学耳鼻咽喉科で手術を行つた,一側聴耳12例について,(1)対側聾の原因,(2)聴力改善成績補聴器装用,(3)手術方法•聴力改善成績,(4)術前検出菌,(5)鼓膜閉鎖耳漏停止について検討を行った.日本耳科学会2000年案による聴力改善成功率は,気骨導差15dB以内9例(75%),術後気導聴力3...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 107; no. 1; pp. 12 - 17
Main Authors 桂, 弘和, 辻, 恒治郎, 武藤, 俊彦, 寺田, 友紀, 佐伯, 暢生, 阪上, 雅史
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 2004
日本耳鼻咽喉科学会
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Summary:対側耳が高度難聴である一側聴耳(only hearing ear)の場合,手術操作に特に慎重を要する.それは鼓室形成術には感音性難聴の危険性が少しながらも存在し,難聴が生じた場合,日常生活において大きなハンディキャップとなりうるためである.今回我々は,1999年4月から2003年3月までの4年間に兵庫医科大学耳鼻咽喉科で手術を行つた,一側聴耳12例について,(1)対側聾の原因,(2)聴力改善成績補聴器装用,(3)手術方法•聴力改善成績,(4)術前検出菌,(5)鼓膜閉鎖耳漏停止について検討を行った.日本耳科学会2000年案による聴力改善成功率は,気骨導差15dB以内9例(75%),術後気導聴力30dB以内4例(33.3%),気導改善15dB以上6例(50%)であり,全体では10例(83.3%)の改善率であった.また術前に補聴器を装用していた8例中4例が補聴器で日常生活が送れるようになった.only hearing carの手術では.熟練した術者が耳小骨付近の操作を最小限にとどめながら手術し,聴力改善がなければ補聴器を装用する方針がよいと思われた.特に高度混合難聴のリスクの高い症例は,術前の患者説明で,聴力が極端に悪化した場合は人工内耳の可能性がある旨を伝えることか必要と考えられた.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.107.12