記載的な論文と査読のあり方について
「ある哺乳類研究者の発言」年代や出典は不確かだが, 内容ははっきり覚えている. 哺乳類について書籍も論文も貧弱であった1970年代に, ある哺乳類研究者が博物学の伝統について次のような内容を書いておられた. 曰く, 「欧米には博物学の伝統があるが, 日本にはそれがない. そのために分子生物学のような研究は盛んだが, 哺乳類の生活に関する地道な研究が乏しい. 」これに続く内容については記憶が曖昧だが, 学生だった私はその言葉に強く共鳴して「だから日本の研究者もそのような研究を進めるべきだ」と思った. そして自分は学生だが, そう書いた人は大学の教授だったから, 日本でもそういう研究が進められるも...
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Published in | 哺乳類科学 Vol. 62; no. 2; pp. 279 - 283 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本哺乳類学会
2022
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Summary: | 「ある哺乳類研究者の発言」年代や出典は不確かだが, 内容ははっきり覚えている. 哺乳類について書籍も論文も貧弱であった1970年代に, ある哺乳類研究者が博物学の伝統について次のような内容を書いておられた. 曰く, 「欧米には博物学の伝統があるが, 日本にはそれがない. そのために分子生物学のような研究は盛んだが, 哺乳類の生活に関する地道な研究が乏しい. 」これに続く内容については記憶が曖昧だが, 学生だった私はその言葉に強く共鳴して「だから日本の研究者もそのような研究を進めるべきだ」と思った. そして自分は学生だが, そう書いた人は大学の教授だったから, 日本でもそういう研究が進められるものと期待していた. しかし私の知る限り, その人や周辺からそういう研究が生まれることはなかった. |
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ISSN: | 0385-437X 1881-526X |
DOI: | 10.11238/mammalianscience.62.279 |