全身性エリテマトーデスと抗CD20抗体

関節リウマチでは最近有望な生物学的製剤が次々と開発され,臨床の場で使用されるようになってきている.Tumor necrosis factorやinterleukinを標的にした抗サイトカイン療法がその代表だが,細胞表面マーカーや種々の接着分子に対する抗体も近い将来には使用可能になる予定で,本症に対する治療の選択肢がさらに広がることが予想される.一方,全身性エリテマトーデス(SLE)では抗CD20抗体(rituximab)療法の有用性が最近注目されている.本薬剤はCD20を介して細胞増殖を抑制することから,慢性リンパ性白血病やマクログロブリン血症などB細胞系悪性腫瘍の治療に従来から用いられてきた...

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Published inTHE SHINSHU MEDICAL JOURNAL Vol. 53; no. 5; p. 276
Main Author 松田, 正之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 2005
The Shinshu Medical Society
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ISSN0037-3826
1884-6580
DOI10.11441/shinshumedj.53.276

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Summary:関節リウマチでは最近有望な生物学的製剤が次々と開発され,臨床の場で使用されるようになってきている.Tumor necrosis factorやinterleukinを標的にした抗サイトカイン療法がその代表だが,細胞表面マーカーや種々の接着分子に対する抗体も近い将来には使用可能になる予定で,本症に対する治療の選択肢がさらに広がることが予想される.一方,全身性エリテマトーデス(SLE)では抗CD20抗体(rituximab)療法の有用性が最近注目されている.本薬剤はCD20を介して細胞増殖を抑制することから,慢性リンパ性白血病やマクログロブリン血症などB細胞系悪性腫瘍の治療に従来から用いられてきた.また同時に本薬剤は免疫グロブリンの産生を抑制することから,M蛋白中に病原抗体を含む慢性多発神経炎などの治療にも用いられている1).SLEは膠原病の中でも発症機序における自己抗体あるいは免疫複合体の役割が比較的明らかにされている疾患の一つで,種々の薬剤に抵抗性の難治例の中に抗CD20抗体が著効を示す症例があることが報告された2)3).本薬剤の利点は一度投与すると強力な抗体産生抑制効果が約半年から1年は持続することと,アレルギー反応と感染症に注意すれば重篤な副作用が少ない点があげられる.従来からSLEではステロイド薬や免疫抑制薬が治療に用いられてきたが,種々の副作用で悩まされることが少なくなく,抗CD20抗体を導入することでこれらの薬剤の早期の減量ないしは中止が期待できる点も見逃せない利点である.高価な薬剤であるため安易な使用はもちろん慎むべきではあるが,SLEの難治例や従来からの薬剤が副作用で使用できないような症例に対して,本薬剤が画期的な選択肢になる可能性があり,今後の研究の進展が期待される. 文献 1) Pestronk A, Florence J, Miller T, Choksi R, Al-Lozi MT, Levine TD:Treatment of IgM antibody associated polyneuropathies using rituximab. J Neurol Neurosurg Psychiatry 74:485-489, 2003 2) van Vollenhoven RF, Gunnarsson I, Welin-Henriksson E, Sundelin B, Osterborg A, Jacobson SH, Klareskog L:Biopsy-verified response of severe lupus nephritis to treatment with rituximab (anti-CD20 monoclonal antibody) plus cyclophosphamide after biopsy-documented failure to respond to cyclophosphamide alone. Scand J Rheumatol 33:423-427, 2004 3) Tokunaga M, Fujii K, Saito K, Nakayamada S, Tsujimura S, Nawata M, Tanaka Y:Down-regulation of CD40 and CD80 on B cells in patients with life-threatening systemic lupus erythematosus after successful treatment with rituximab. Rheumatology 44:176-182, 2005
ISSN:0037-3826
1884-6580
DOI:10.11441/shinshumedj.53.276