正統的周辺参加論と認知的徒弟制

さて新人はいかにして先輩からその熟練の技と洗練された複雑な知識を学び取ってきたのでしょうか. 教育に携わる人でなくとも, 多くの人が関心のあるところですね. 本稿では, それらを裏付ける学習理論である認知的徒弟制, さらにそこから派生した正統的周辺参加の2つについて概要を述べます. これらは, 世界の医学/医療教育学修士課程においても必修で扱われる学習内容ですし, 多様な学習理論の中でも基本的なものです. 医療に限らず, 多くの職業において, 伝統的徒弟制という方法が技の伝承に活用されてきました. そこでは, いわゆる言葉を発しない師匠が, 「俺の背中を見ろ」と背中で語り, すべてを見て学び取...

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Published in医学教育 Vol. 43; no. 4; pp. 292 - 293
Main Author 西城, 卓也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医学教育学会 25.08.2012
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ISSN0386-9644
2185-0453
DOI10.11307/mededjapan.43.292

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Summary:さて新人はいかにして先輩からその熟練の技と洗練された複雑な知識を学び取ってきたのでしょうか. 教育に携わる人でなくとも, 多くの人が関心のあるところですね. 本稿では, それらを裏付ける学習理論である認知的徒弟制, さらにそこから派生した正統的周辺参加の2つについて概要を述べます. これらは, 世界の医学/医療教育学修士課程においても必修で扱われる学習内容ですし, 多様な学習理論の中でも基本的なものです. 医療に限らず, 多くの職業において, 伝統的徒弟制という方法が技の伝承に活用されてきました. そこでは, いわゆる言葉を発しない師匠が, 「俺の背中を見ろ」と背中で語り, すべてを見て学び取ろうとする弟子がいました. Laveは, 仕立て屋に関する研究を通じて, 伝統的徒弟制度の特徴を明らかにしたことで知られています2). それは, (1)知識は問題の解決に役立つものである, (2)実にさまざまな文脈の中で知識は獲得される, (3)学習者に与えられる課題は, 職場で日々発生する, 解決する必要に迫られた問題や, どうしてもしなければならない仕事である, 等でした.
ISSN:0386-9644
2185-0453
DOI:10.11307/mededjapan.43.292