カルバメート,アシルヒドラジン,アンモニアを用いる含窒素化合物の効率的合成法の開発

1. はじめに 三価の窒素原子を含む有機化合物(本論文では単に「含窒素化合物」と略す)は, 医薬品や機能性材料においてなくてはならない化合物群である. なぜなら, 窒素原子がこれらの化合物の機能発現において果たす役割が大きいためである. 窒素の電気陰性度は炭素のそれより大きいが酸素ほどは大きくない. したがって, 窒素原子上の非共有電子対は, (a)プロトンに対し高い塩基性を示す, (b)電子不足炭素に対し高い求核性を示す, (c)カルボニル基などのπ電子に共役して電子を供与する, (d)水素結合を形成する, (e)分子に高い極性を持たせる, などのユニークな性質や機能を発現する. 一方, 含...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 126; no. 12; pp. 1319 - 1340
Main Author 杉浦, 正晴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本薬学会 01.12.2006
日本薬学会
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Summary:1. はじめに 三価の窒素原子を含む有機化合物(本論文では単に「含窒素化合物」と略す)は, 医薬品や機能性材料においてなくてはならない化合物群である. なぜなら, 窒素原子がこれらの化合物の機能発現において果たす役割が大きいためである. 窒素の電気陰性度は炭素のそれより大きいが酸素ほどは大きくない. したがって, 窒素原子上の非共有電子対は, (a)プロトンに対し高い塩基性を示す, (b)電子不足炭素に対し高い求核性を示す, (c)カルボニル基などのπ電子に共役して電子を供与する, (d)水素結合を形成する, (e)分子に高い極性を持たせる, などのユニークな性質や機能を発現する. 一方, 含窒素化合物の合成においては, これらの性質が障害となることもある. 例えば, Bronsted酸やLewis酸触媒は, アミンの共存下では塩を形成してしまうために効果的に用いることができない. また, 窒素の高い求核性は過剰反応を引き起こし, 窒素に由来する分子の高い極性は精製を困難にする. したがって, 適当な保護基によって窒素の反応性を抑えるなどの何らかの工夫がなされている.
ISSN:0031-6903
1347-5231
DOI:10.1248/yakushi.126.1319