終末糖化産物によるサイトカイン捕捉機構の同定と病態生理学的意義の解明
「1. はじめに」 わが国は急激な老齢人口の増大局面を迎えており, 健康寿命の延伸が喫緊の課題となっている. これを解決するためには, 健康寿命に大きく影響する糖尿病や脳・心血管疾患などの疾患が生じるメカニズムを解明し, 治療戦略を構築することが必要である. これらの疾患の基盤として, 非感染性の炎症反応の遷延化(慢性炎症)が注目されている. 最近の研究により, 複数の炎症性サイトカインが協調的に作用することで生じた慢性炎症が, 細胞や組織の機能不全を引き起こし, 慢性炎症性疾患が成立することが示唆されている. このように, 「どのようにして慢性炎症性疾患が成立するのか」については解明が進みつ...
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Published in | YAKUGAKU ZASSHI Vol. 140; no. 11; pp. 1335 - 1341 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本薬学会
01.11.2020
日本薬学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0031-6903 1347-5231 |
DOI | 10.1248/yakushi.20-00154 |
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Summary: | 「1. はじめに」 わが国は急激な老齢人口の増大局面を迎えており, 健康寿命の延伸が喫緊の課題となっている. これを解決するためには, 健康寿命に大きく影響する糖尿病や脳・心血管疾患などの疾患が生じるメカニズムを解明し, 治療戦略を構築することが必要である. これらの疾患の基盤として, 非感染性の炎症反応の遷延化(慢性炎症)が注目されている. 最近の研究により, 複数の炎症性サイトカインが協調的に作用することで生じた慢性炎症が, 細胞や組織の機能不全を引き起こし, 慢性炎症性疾患が成立することが示唆されている. このように, 「どのようにして慢性炎症性疾患が成立するのか」については解明が進みつつある. 一方で, 「なぜ慢性炎症が生じるのか」が未解明であるため, 慢性炎症性疾患の根治的な治療法の開発が妨げられている. 筆者は, 慢性炎症の引き金を引く分子の候補として, 還元糖がアミノ基を有する分子と非酵素的に結合することによって生じる終末糖化産物(advanced glycation end products; AGEs)に注目している. |
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ISSN: | 0031-6903 1347-5231 |
DOI: | 10.1248/yakushi.20-00154 |