急性下壁心筋梗塞における異常Q波の消失と左室機能改善の関連についての検討

急性期に異常Q波が出現したQ波心筋梗塞には,異常Q波が経過中に消失する例が存在する。これらは,Q波が消失しない例と比べて,梗塞サイズが小さく,慢性期の左室機能が良好であるという報告がある。しかし,報告のほとんどは前壁中隔心筋梗塞についての報告であり,下壁梗塞に限定しての報告は認められない。本研究は,下壁心筋梗塞における異常Q波消失の臨床的意義を明らかにすることを目的とし,下壁心筋梗塞における下壁領域の誘導(II,III,aVF誘導)の異常Q波の消失と慢性期の左室壁機能の関連を検討した。対象は初回Q波急性下壁心筋梗塞で当院に入院した184例である。この184例を,心筋梗塞発症1年後の心電図におい...

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Published inJOURNAL OF THE KYORIN MEDICAL SOCIETY Vol. 40; no. 3; pp. 43 - 50
Main Authors 水野, 宜英, 坂田, 好美, 佐藤, 一樹, 南島, 俊徳, 曽我, 有希子, 古谷, 充史, 田口, 浩樹, 武本, 和也, 四倉, 正之, 吉野, 秀朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 杏林医学会 2009
The Kyorin Medical Society
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Summary:急性期に異常Q波が出現したQ波心筋梗塞には,異常Q波が経過中に消失する例が存在する。これらは,Q波が消失しない例と比べて,梗塞サイズが小さく,慢性期の左室機能が良好であるという報告がある。しかし,報告のほとんどは前壁中隔心筋梗塞についての報告であり,下壁梗塞に限定しての報告は認められない。本研究は,下壁心筋梗塞における異常Q波消失の臨床的意義を明らかにすることを目的とし,下壁心筋梗塞における下壁領域の誘導(II,III,aVF誘導)の異常Q波の消失と慢性期の左室壁機能の関連を検討した。対象は初回Q波急性下壁心筋梗塞で当院に入院した184例である。この184例を,心筋梗塞発症1年後の心電図において,II,III,aVFの全誘導の異常Q波が消失した20例(Group Q(-)),2誘導(II,aVF誘導)の異常Q波が消失した37例(Group Q(+)I),1誘導(aVF誘導)のみ異常Q波が消失した70例(Group Q(+)II),3誘導(II,III,aVF)全てに異常Q波が残存した57例(Group Q(+)III)の4群に分類した。異常Q波が消失した3群は,心エコーによる下壁領域の局所壁運動(Inf-WMI)が急性期から発症1年後までに有意に改善し(p < 0.01),心筋viabilityの存在が認められた。発症1年後までに左室壁運動が正常に改善した症例は,Group Q(-)で7例(35%),およびGroup Q(+)Iで8例 (22%)と,Group Q(+)III(0例:0%)より高率に認められた(p < 0.001)。Group Q(-),Group Q(+)Iでは,異常Q波が残存するGroup Q(+)IIIと比較し,Inf-WMIとSPECTによるtotal defect scoreは有意に小さく,さらに,発症1年後の左室駆出率は有意に高値であった(p < 0.001)。下壁心筋梗塞の慢性期に下壁領域の異常Q波が消失する症例では,心筋viabilityが存在し,梗塞サイズが小さく,左室収縮能が良好であった。とくに,異常Q波の消失する誘導数が多い症例ほど,左室壁運動の改善や慢性期の左室収縮能が良好であった。下壁領域の異常Q波の消失の有無および消失する誘導数は左室機能改善の1つの指標であると考えられた。
ISSN:0368-5829
1349-886X
DOI:10.11434/kyorinmed.40.43