顔面神経麻痺後の病的共同運動の治療

「1. はじめに」 (末梢性)顔面神経麻痺は, 適切な治療を行えば治癒率が約90%の, 予後良好な疾患である. しかし, 麻痺が高度な場合や, 治療が適切でなかった場合には, 病的共同運動, 顔面拘縮, 痙攣, アブミ骨筋性耳鳴, ワニの涙といった後遺症の生じることがある. このうち病的共同運動は, 神経再生時の過誤支配によって生じると考えられ, 後遺症の中でも頻度が高い. 顔面のある部位の随意運動や反射的運動時に, 他の部位の不随意運動も伴うのが症状である. 具体的には, 瞬目時に患側の頬部から口角がピクピク痙攣したように動いたり, 強閉眼時には口角挙上, 頬部の隆起, 鼻唇溝が顕著になる....

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 116; no. 12; pp. 1344 - 1345
Main Author 田邉, 牧人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.12.2013
日本耳鼻咽喉科学会
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Summary:「1. はじめに」 (末梢性)顔面神経麻痺は, 適切な治療を行えば治癒率が約90%の, 予後良好な疾患である. しかし, 麻痺が高度な場合や, 治療が適切でなかった場合には, 病的共同運動, 顔面拘縮, 痙攣, アブミ骨筋性耳鳴, ワニの涙といった後遺症の生じることがある. このうち病的共同運動は, 神経再生時の過誤支配によって生じると考えられ, 後遺症の中でも頻度が高い. 顔面のある部位の随意運動や反射的運動時に, 他の部位の不随意運動も伴うのが症状である. 具体的には, 瞬目時に患側の頬部から口角がピクピク痙攣したように動いたり, 強閉眼時には口角挙上, 頬部の隆起, 鼻唇溝が顕著になる. また, 会話時や食事時には患側の瞼裂狭小化や閉眼状態となる場合もある. ごく軽度の病的共同運動であれば気にならないこともあるが, 中程度以上になると不快感の強いことが多い. 「2. 機序」 神経損傷程度の分類法のうちSeddonの分類では, 神経障害は(1)神経無動作(neurapraxia), (2)軸索断裂(axonotmesis), (3)神経断裂(neurotmesis)に分けられる.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.116.1344