大規模疫学研究の現状─広島・長崎の成人健康調査
成人健康調査(Adult Health Study:AHS)は,広島,長崎の原爆被爆者に対する原爆放射線の影響を調査する目的で1950年に設定された.AHS 対象者は,1950年の国勢調査に基づき,原爆投下時に広島,長崎にいた住民2万人から構成され,1958年から2年毎の健診を通じて追跡されている.50年に亘る長期追跡調査のデータの蓄積は,放射線影響研究だけでなく,脳卒中,認知症などを含む臨床疫学研究にも,広く活かされている. AHSの認知症研究では,女性においては,アルツハイマー型認知症が血管性認知症に比べ,有病率が高いことが分かった.また,最近の脳卒中研究では,日本人における脳卒中の生涯リ...
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Published in | 脳卒中 Vol. 31; no. 6; pp. 439 - 442 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本脳卒中学会
2009
日本脳卒中学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0912-0726 1883-1923 |
DOI | 10.3995/jstroke.31.439 |
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Summary: | 成人健康調査(Adult Health Study:AHS)は,広島,長崎の原爆被爆者に対する原爆放射線の影響を調査する目的で1950年に設定された.AHS 対象者は,1950年の国勢調査に基づき,原爆投下時に広島,長崎にいた住民2万人から構成され,1958年から2年毎の健診を通じて追跡されている.50年に亘る長期追跡調査のデータの蓄積は,放射線影響研究だけでなく,脳卒中,認知症などを含む臨床疫学研究にも,広く活かされている. AHSの認知症研究では,女性においては,アルツハイマー型認知症が血管性認知症に比べ,有病率が高いことが分かった.また,最近の脳卒中研究では,日本人における脳卒中の生涯リスクを初めて求めた.さらに,中年期の血圧は,脳卒中の生涯リスクの予測因子であることを示した.原爆放射線の影響は,認知症には認められず,脳卒中との関係は現在解析が進められている. この長期に亘る大規模調査から,今後も,意義ある疾患予防に関する疫学所見が得られることが期待される. |
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ISSN: | 0912-0726 1883-1923 |
DOI: | 10.3995/jstroke.31.439 |