グルココルチコイドの抗蛋白尿作用を追い求めて

特発性ネフローゼは,小児腎臓病領域の主たる治療対象疾患である。過去60 年以上にわたり,特発性ネフローゼの治療の第一選択は合成グルココルチコイド(ステロイド)であるが,その劇的な抗蛋白尿作用の機序は未だ未解明である。我々は,ヒト糸球体にグルココルチコイド受容体が発現し,ステロイドとの結合により核移行することを見出した。さらに,グルココルチコイド不活化酵素がヒト糸球体ポドサイトに発現し,実際に酵素活性を有することも見出した。これらの事実を基に,我々はネフローゼ糸球体に対するステロイドの直接的薬理作用の概念を提唱した。その後,我々はさらにポドサイト内のエネルギーバランスの障害が蛋白尿の病態の根幹に...

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Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 31; no. 1; pp. 21 - 24
Main Author 楊, 國昌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本小児腎臓病学会 2018
日本小児腎臓病学会
Subjects
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ISSN0915-2245
1881-3933
DOI10.3165/jjpn.rv.2018.0001

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Summary:特発性ネフローゼは,小児腎臓病領域の主たる治療対象疾患である。過去60 年以上にわたり,特発性ネフローゼの治療の第一選択は合成グルココルチコイド(ステロイド)であるが,その劇的な抗蛋白尿作用の機序は未だ未解明である。我々は,ヒト糸球体にグルココルチコイド受容体が発現し,ステロイドとの結合により核移行することを見出した。さらに,グルココルチコイド不活化酵素がヒト糸球体ポドサイトに発現し,実際に酵素活性を有することも見出した。これらの事実を基に,我々はネフローゼ糸球体に対するステロイドの直接的薬理作用の概念を提唱した。その後,我々はさらにポドサイト内のエネルギーバランスの障害が蛋白尿の病態の根幹に関わること,ステロイドを含む免疫抑制薬が,ポドサイト内のエネルギー代謝パスウェイに作用することを示した。今後は,このエネルギー代謝パスウェイに介入可能な化合物が,ステロイド依存性や抵抗性を救済する新規の創薬研究のシーズになることが期待される。
ISSN:0915-2245
1881-3933
DOI:10.3165/jjpn.rv.2018.0001