嚥下障害の診断と治療
「はじめに」 「嚥下障害診療は自信があります!」と胸を張って言える耳鼻咽喉科医は希少種である. のみ込みにくいという症状は耳鼻咽喉科医の専門領域である「口腔・咽喉頭」で起こるが, 頭頸部腫瘍などの一部の器質的疾患を除けば, 多くは脳神経内科疾患や内分泌疾患, 自己免疫疾患など, 耳鼻咽喉科の教科書には載っていない疾患による運動機能障害により生じる. また, ほとんどの耳鼻咽喉科疾患は診断から治療まで疾患単位で完結していくが, 嚥下障害は感覚入力から運動出力まで多彩な病態を包含したひとつの「症候」であり, 疾患単位としての診断アプローチの標準化が難しく嚥下障害診療へのハードルを高くしている要因で...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 123; no. 6; pp. 511 - 516 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
20.06.2020
日本耳鼻咽喉科学会 |
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Summary: | 「はじめに」 「嚥下障害診療は自信があります!」と胸を張って言える耳鼻咽喉科医は希少種である. のみ込みにくいという症状は耳鼻咽喉科医の専門領域である「口腔・咽喉頭」で起こるが, 頭頸部腫瘍などの一部の器質的疾患を除けば, 多くは脳神経内科疾患や内分泌疾患, 自己免疫疾患など, 耳鼻咽喉科の教科書には載っていない疾患による運動機能障害により生じる. また, ほとんどの耳鼻咽喉科疾患は診断から治療まで疾患単位で完結していくが, 嚥下障害は感覚入力から運動出力まで多彩な病態を包含したひとつの「症候」であり, 疾患単位としての診断アプローチの標準化が難しく嚥下障害診療へのハードルを高くしている要因である. 一方で, 嚥下障害の原因の多くを占める脳神経内科領域でも実は嚥下障害の評価に精通している医師は少ない. 脳神経症候や錐体外路症候など, 間接的に嚥下障害を推定しうる所見や画像所見があっても, 解剖学的な理解のもと, 実際の嚥下運動の動的パターン異常との定量的な相関性を示すことが難しいからである. |
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ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.123.511 |