粘膜下下鼻甲介骨部分切除術を先行する内視鏡下鼻副鼻腔手術
内視鏡下鼻副鼻腔手術 (endoscopic sinus surgery, 以下 ESS と略) における一部の症例に対して, 下鼻甲介骨が上顎洞内側壁に連続している基部のみを外して上顎洞を開放する粘膜下下鼻甲介骨部分切除術 (submucosal partial-turbinectomy, 以下 SPT と略) を先行して施行した. この術式により, ESS の初期段階で上顎洞の開放が容易となるだけでなく, 中鼻道が十分に開大するため, その後の副鼻腔に対する手術操作が容易となった. SPT を施行した ESS 症例の術後成績について検討した. 対象は, 2012年1月から2014年6月ま...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 118; no. 7; pp. 882 - 887 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
20.07.2015
日本耳鼻咽喉科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
DOI | 10.3950/jibiinkoka.118.882 |
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Summary: | 内視鏡下鼻副鼻腔手術 (endoscopic sinus surgery, 以下 ESS と略) における一部の症例に対して, 下鼻甲介骨が上顎洞内側壁に連続している基部のみを外して上顎洞を開放する粘膜下下鼻甲介骨部分切除術 (submucosal partial-turbinectomy, 以下 SPT と略) を先行して施行した. この術式により, ESS の初期段階で上顎洞の開放が容易となるだけでなく, 中鼻道が十分に開大するため, その後の副鼻腔に対する手術操作が容易となった. SPT を施行した ESS 症例の術後成績について検討した. 対象は, 2012年1月から2014年6月までの2年6カ月間に ESS を施行した268例のうち, SPT を施行した140例261側とした. 疾患の内訳は, 慢性副鼻腔炎が129例, 上顎洞真菌症が10例, 上顎洞乳頭腫が1例であった. また, 鼻中隔彎曲症を認めた125例に対して鼻中隔矯正術を併施した. 検討項目は, SPT を施行した症例の術後1カ月, 3カ月, 6カ月の各時点における中鼻道狭窄率および上顎洞膜様部開放部の閉鎖率 (以下,「上顎洞開口部閉鎖率」と略) とした. 中鼻道狭窄率は, 術後1カ月の時点で14.2%であり, 3カ月で7.4%, 6カ月で3.7%と低下した. 狭窄した症例はいずれも, 鼻中隔彎曲症に対して鼻中隔矯正術を施行した症例であった. なお, 中鼻道が閉鎖した症例は認めなかった. 上顎洞開口部閉鎖率は, 術後1カ月の時点で1.5%であり, 3カ月で2.9%,6カ月で6.7%と増加した. 閉鎖した要因は, 上顎洞粘膜の肥厚によるものであった. いずれも, ESS 術後の状態としては許容できる成績であり, 本術式は, ESS 術後の粘膜の創傷治癒において, 換気ルートの確保という点で, 大きなメリットとなり得ると考えた. また, SPT では, 下鼻甲介骨を基部以外の大部分で温存するため, 将来的な萎縮性鼻炎や empty nose syndrome 発症のリスクを減らすことにもつながる. |
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ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.118.882 |