抗生剤入りβ-リン酸三カルシウムとハイドロキシアパタイトにて沈静化しえた慢性骨髄炎の一例

「はじめに」慢性骨髄炎に対してはさまざまな治療法が報告されているが, 再燃を生じ治療に難渋することが多い. 今回われわれは40年来の慢性骨髄炎に対し, 抗生剤入りハイドロキシアパタイトブロック(以下HA)とβ-リン酸三カルシウム(以下β-TCP)を用い沈静化できた例を経験したので報告する. 症例 80歳男性 【主訴】両手指のしびれ, 左下腿からの排膿 【既往歴】胆石にて胆嚢摘出術 【病歴】昭和35年頃より左脛骨骨髄炎にて数回の手術を施行されるも沈静化できず, 瘻孔を形成し以後放置されていた. 平成15年10月20日転倒し前頭部を打撲, 中心性頸髄損傷の診断にて当科入院となる. 【入院時現症】体...

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Published in整形外科と災害外科 Vol. 54; no. 4; pp. 694 - 697
Main Authors 一宮, 邦訓, 奥平, 毅, 堀内, 英彦, 日高, 信道
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 2005
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Summary:「はじめに」慢性骨髄炎に対してはさまざまな治療法が報告されているが, 再燃を生じ治療に難渋することが多い. 今回われわれは40年来の慢性骨髄炎に対し, 抗生剤入りハイドロキシアパタイトブロック(以下HA)とβ-リン酸三カルシウム(以下β-TCP)を用い沈静化できた例を経験したので報告する. 症例 80歳男性 【主訴】両手指のしびれ, 左下腿からの排膿 【既往歴】胆石にて胆嚢摘出術 【病歴】昭和35年頃より左脛骨骨髄炎にて数回の手術を施行されるも沈静化できず, 瘻孔を形成し以後放置されていた. 平成15年10月20日転倒し前頭部を打撲, 中心性頸髄損傷の診断にて当科入院となる. 【入院時現症】体温:36.4℃, 血圧:140/82mmHg, 脈拍:78回/分とvital signには異常を認めなかった. 神経学的には両C6領域の感覚低下, 両上腕三頭筋 腕橈骨筋腱反射の減弱がみられた. 筋力低下は認められなかった. 左脛骨近位部に瘻孔を認め同部より排膿見られ, 培養にてMRSAが検出された. 臨床検査所見では白血球は5,000と上昇を認めず, CRPは0.9と軽度上昇していた. またAST:44, ALP:1,188, γ-GTP:333と胆道系酵素の上昇を認めたが, これは胆嚢摘出後の影響によるものと考えられた. 単純X線写真(図1)では脛骨近位部に周囲の骨硬化像を伴った骨透亮像を認め, MRI(図2)では一致した部位に比較的境界明瞭で辺縁不整な病巣を認めた.
ISSN:0037-1033
1349-4333
DOI:10.5035/nishiseisai.54.694