小児の脳低温療法

低酸素虚血による新生児脳症において,生後6時間以内に33~34℃の全身冷却か頭部冷却(核温は34~35℃)を導入・72時間維持することにより,後遺症なき生存が増加することは,これまでに6件のIII相試験から確認されている.しかしながら,これら2通りの冷却法がもたらす脳表温の差は10℃にも達するため,冷却の調整によって,さらに高い効果が期待される.一方,小児の脳症においては,大規模な検討は少ない.著者らの研究では,脳症発症から冷却導入までの時間と予後に指数関数的な相関があることが明らかになり,早期の脳低温療法の有効性と,受傷後12時間を過ぎた脳低温療法導入の弊害が同時に示唆された.わが国では臓器...

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Published in日本臨床麻酔学会誌 Vol. 32; no. 1; pp. 27 - 31
Main Authors 岩田, 欧介, 岩田, 幸子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床麻酔学会 2012
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ISSN0285-4945
1349-9149
DOI10.2199/jjsca.32.027

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Summary:低酸素虚血による新生児脳症において,生後6時間以内に33~34℃の全身冷却か頭部冷却(核温は34~35℃)を導入・72時間維持することにより,後遺症なき生存が増加することは,これまでに6件のIII相試験から確認されている.しかしながら,これら2通りの冷却法がもたらす脳表温の差は10℃にも達するため,冷却の調整によって,さらに高い効果が期待される.一方,小児の脳症においては,大規模な検討は少ない.著者らの研究では,脳症発症から冷却導入までの時間と予後に指数関数的な相関があることが明らかになり,早期の脳低温療法の有効性と,受傷後12時間を過ぎた脳低温療法導入の弊害が同時に示唆された.わが国では臓器移植法案の議論を背景に,脳低温療法が“脳死患者を蘇らせる魔法の治療”として報道され,臨床応用が地道なエビデンスの蓄積に先行してきた.今後,脳保護の先駆者を多く輩出したわが国から,小児脳保護療法におけるランドマークとなるエビデンスを多く発信できるように,施設間の情報交換を活発にし,プロトコールを共有することが求められる.
ISSN:0285-4945
1349-9149
DOI:10.2199/jjsca.32.027