音楽の統語処理に及ぼすバス旋律の効果

右前頭部初期陰性電位(early right anterior negativity: ERAN)は,西洋の調性音楽において調性的文脈から逸脱した和音が提示されたときに生じる事象関連電位である。ERANは,音楽の統語処理を反映すると考えられている。近年の研究で,ピッチ逸脱が主旋律に生じたときは,他の声部に生じたときよりもERANが増大すると報告された。しかし,その研究はソプラノの主旋律のみを検討していたため,この効果が主旋律の逸脱によるものか,高音声部の逸脱によるものかは明らかでない。本研究ではバス主旋律の刺激を用いて,ソプラノが逸脱する和音とバスが逸脱する和音に対するERAN振幅を比較した。...

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Bibliographic Details
Published in生理心理学と精神生理学 Vol. 38; no. 3; pp. 177 - 184
Main Authors 石田, 海, 池田, 一成, 入戸野, 宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生理心理学会 31.12.2020
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ISSN0289-2405
2185-551X
DOI10.5674/jjppp.2008br

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Summary:右前頭部初期陰性電位(early right anterior negativity: ERAN)は,西洋の調性音楽において調性的文脈から逸脱した和音が提示されたときに生じる事象関連電位である。ERANは,音楽の統語処理を反映すると考えられている。近年の研究で,ピッチ逸脱が主旋律に生じたときは,他の声部に生じたときよりもERANが増大すると報告された。しかし,その研究はソプラノの主旋律のみを検討していたため,この効果が主旋律の逸脱によるものか,高音声部の逸脱によるものかは明らかでない。本研究ではバス主旋律の刺激を用いて,ソプラノが逸脱する和音とバスが逸脱する和音に対するERAN振幅を比較した。その結果,ERAN振幅は,ソプラノ声部が逸脱するときにバス声部が逸脱するときよりも大きかった。これは,音楽の統語処理において,高音声部の効果が主旋律の効果よりも優勢であることを示唆している。
ISSN:0289-2405
2185-551X
DOI:10.5674/jjppp.2008br