高齢者の認知・精神機能と転倒リスク
フレイルは,身体的な問題のみならず,認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題,さらに独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念とされ,転倒リスクの把握のためにも,身体機能のみならず,認知機能や精神機能を評価することも重要となる。また,認知・精神機能低下を予防する,または改善を図ることは,転倒予防の側面からも有益となる。認知機能の領域による転倒への影響を調べてみると,なかでも注意や実行機能の低下が転倒のリスクを増大させる可能性が高い。また,複数の課題に同時に注意を向けるといった注意分配機能の低下は,転倒リスクを増大させる重要な要因のひとつとされている。転倒によって弊害となる心理的な要素として転倒...
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Published in | 日本転倒予防学会誌 Vol. 3; no. 3; pp. 5 - 10 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本転倒予防学会
2017
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Subjects | |
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ISSN | 2188-5702 2188-5710 |
DOI | 10.11335/tentouyobou.3.3_5 |
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Summary: | フレイルは,身体的な問題のみならず,認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題,さらに独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念とされ,転倒リスクの把握のためにも,身体機能のみならず,認知機能や精神機能を評価することも重要となる。また,認知・精神機能低下を予防する,または改善を図ることは,転倒予防の側面からも有益となる。認知機能の領域による転倒への影響を調べてみると,なかでも注意や実行機能の低下が転倒のリスクを増大させる可能性が高い。また,複数の課題に同時に注意を向けるといった注意分配機能の低下は,転倒リスクを増大させる重要な要因のひとつとされている。転倒によって弊害となる心理的な要素として転倒恐怖感が挙げられ,転倒恐怖感を有していると活動制限を引き起こし,さらなる心身機能の低下を招き,より一層に転倒リスクを高めることにつながる。転倒予防のための介入として,身体機能面からの介入のみならず,注意や実行機能,注意分配機能(二重課題など)の側面からの介入も有効性が期待されている。また,運動介入を通じて身体機能の改善が図られ,そのことが転倒恐怖感の軽減やうつ徴候の軽減といった心理・精神的な状態の安定につながり,身体活動や社会活動の向上を促進して,転倒リスクの軽減に寄与するといった好循環をもたらすことが期待される。 |
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ISSN: | 2188-5702 2188-5710 |
DOI: | 10.11335/tentouyobou.3.3_5 |