中性子/X線複合構造解析で酵素触媒反応におけるプロトンリレーを可視化する

• Published in: 生物物理 Vol. 56; no. 3; pp. 171 - 173
• Main Authors: 中村, 彰彦, 石田, 卓也, 日下, 勝弘, 田中, 伊知朗, 新村, 信雄, 鮫島, 正浩, 五十嵐, 圭日子
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 一般社団法人 日本生物物理学会 2016; 日本生物物理学会
• ISSN: 0582-4052; 1347-4219
• DOI: 10.2142/biophys.56.171

「1. 酵素におけるプロトン観測の重要性」水素原子は酵素分子の中に最も多く含まれている原子であり, 水素結合の重要な要素であるとともに, 酵素の高次構造の安定化や酵素と基質との相互作用に必須である. また, 極性残基や水酸基を持つアミノ酸では, 基質や溶媒とプロトン(水素原子核, 一般的には水素イオンH+とも呼ばれる)の交換が起こることもよく知られている. 例えば, 加水分解酵素では基質へのプロトンの付加と水分子からのプロトンの引き抜きで反応を行っており, プロトンポンプではプロトンそのものが輸送されていると言われている. 即ち, 水素原子やプロトンを含めた構造解析は, 酵素の構造や反応機構を理解する上で極めて重要である. 「2. 中性子結晶構造解析」酵素の立体構造を決定する手法として, 最も一般的な方法はX線結晶構造解析であり, これまでに10万以上の構造データがProtein Data Bank(PDB)に登録されている.