救急,集中治療領域における抗菌薬適正使用の取り組み

重症感染症患者の救命と耐性菌出現抑制の両立には,想定原因菌を網羅可能な初期抗菌薬の早期投与と,感受性判明後のde–escalationが重要である。De–escalationは安全で死亡率を低下させるが,集中治療領域ではその施行率は高くはない。自施設ICUに敗血症の診断で入室した76名を検討し,外科的感染症では市中感染・消化器が最多であった。初期治療には90%以上で広域抗菌薬が用いられ,外科系感染症では80%が単剤投与であった。初期治療の適正率は約95%であった。広域抗菌薬投与患者の50%でde–escalationが施行可能であった。重症患者では,原因菌不明,病態改善が得られない,重複感染巣...

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Published in日本外科感染症学会雑誌 Vol. 17; no. 4; pp. 182 - 192
Main Authors 中村, 智之, 山下, 千鶴, 川治, 崇泰, 石川, 清仁, 西田, 修
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本外科感染症学会 31.08.2020
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ISSN1349-5755
2434-0103
DOI10.24679/gekakansen.17.4_182

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Summary:重症感染症患者の救命と耐性菌出現抑制の両立には,想定原因菌を網羅可能な初期抗菌薬の早期投与と,感受性判明後のde–escalationが重要である。De–escalationは安全で死亡率を低下させるが,集中治療領域ではその施行率は高くはない。自施設ICUに敗血症の診断で入室した76名を検討し,外科的感染症では市中感染・消化器が最多であった。初期治療には90%以上で広域抗菌薬が用いられ,外科系感染症では80%が単剤投与であった。初期治療の適正率は約95%であった。広域抗菌薬投与患者の50%でde–escalationが施行可能であった。重症患者では,原因菌不明,病態改善が得られない,重複感染巣,免疫抑制患者など,de–escalationが躊躇されるやむを得ない理由が多岐にわたっていた。集中治療領域での抗菌薬適正使用の推進には,抗菌薬適正使用支援チームや感染対策室,ICU専従薬剤師との協力のもと,重症患者においても感染症診療の基本的ロジックに即して診療を進めること,細菌の迅速診断法の普及などが望まれる。
ISSN:1349-5755
2434-0103
DOI:10.24679/gekakansen.17.4_182