聴覚障害児における有声開始時間 (VOT) 識別の特性に関する検討

要旨: 有声および無声閉鎖子音の識別など, 効率の良い語音聴取には, 有声開始時間 (Voice onset time, VOT) の識別, いわゆる範疇化が関係すると考えられている。本研究では, 聴覚障害児の VOT 識別の特性について検討するため, 聴覚障害児15名 (平均年齢5歳4カ月, 標準偏差10カ月, 年齢範囲4歳3カ月~6歳9カ月), 同年齢健聴児29名を対象に, 半濁音/pa/を用いて, 無声閉鎖子音部分/p/の VOT を変化させ, /pa/から/ba/へと聴取が切り替わる識別閾, およびどちらにも範疇化されない曖昧な VOT 長 (識別幅) について, 補聴器装用群, 人工...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 64; no. 3; pp. 245 - 251
Main Authors 山本, 弥生, 小渕, 千絵, 麻生, 伸, 城間, 将江
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 30.06.2021
日本聴覚医学会
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Summary:要旨: 有声および無声閉鎖子音の識別など, 効率の良い語音聴取には, 有声開始時間 (Voice onset time, VOT) の識別, いわゆる範疇化が関係すると考えられている。本研究では, 聴覚障害児の VOT 識別の特性について検討するため, 聴覚障害児15名 (平均年齢5歳4カ月, 標準偏差10カ月, 年齢範囲4歳3カ月~6歳9カ月), 同年齢健聴児29名を対象に, 半濁音/pa/を用いて, 無声閉鎖子音部分/p/の VOT を変化させ, /pa/から/ba/へと聴取が切り替わる識別閾, およびどちらにも範疇化されない曖昧な VOT 長 (識別幅) について, 補聴器装用群, 人工内耳装用群, 健聴児群で比較した。また範疇化成績と各要因 (測定時年齢, 装用開始年齢, 補聴機器, 語音明瞭度) との関係について検討した。その結果, 範疇化可能例については, 対象群間において識別閾および識別幅に有意差を認めなかった。また範疇化不良例と可能例の比較において, 範疇化成績と各要因との関係は認められなかった。範疇化は健聴児および聴覚障害児においても年齢の影響を受けやすい課題であったが, 聴覚障害児では年長児においても範疇化不良例が存在し, 年齢だけでなく難聴の影響がみられた。範疇化成績は語音明瞭度良好例においても不良な例が存在した。静寂下での単音節聴取とは異なる場面での聴取を反映している可能性が考えられた。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.64.245