人工内耳装用児の学校生活の現状と課題

要旨: 定期的に経過を観察してきた18歳以上の人工内耳装用児3 例の学校生活の現状と課題を検討した。方法は, 語音聴取検査, 主観的なきこえの自己評価, 診療録や保護者の記録等から学校生活の状況や問題点を収集した。その結果, 静寂下では85~90% と高い聴取能を示したが, S/N10 の雑音下になると厳しい例もみられた。また, 自己評価では「数人の歓談」や「離れたところの会話」では聞こえにくさを訴えるものもいた。このような例には, 教師だけではなく, 友達の発言やグループ活動に補聴支援システムを積極的に使用することにより, コミュニケーションのきっかけや人への興味につながることが示唆された。...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 60; no. 2; pp. 143 - 151
Main Authors 佐藤, 紀代子, 杉内, 智子, 城本, 修, 調所, 廣之, 杉尾, 雄一郎, 熊川, 孝三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 28.04.2017
日本聴覚医学会
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Summary:要旨: 定期的に経過を観察してきた18歳以上の人工内耳装用児3 例の学校生活の現状と課題を検討した。方法は, 語音聴取検査, 主観的なきこえの自己評価, 診療録や保護者の記録等から学校生活の状況や問題点を収集した。その結果, 静寂下では85~90% と高い聴取能を示したが, S/N10 の雑音下になると厳しい例もみられた。また, 自己評価では「数人の歓談」や「離れたところの会話」では聞こえにくさを訴えるものもいた。このような例には, 教師だけではなく, 友達の発言やグループ活動に補聴支援システムを積極的に使用することにより, コミュニケーションのきっかけや人への興味につながることが示唆された。そして, 人工内耳装用児が学校生活をとおして自己実現していくためには, 周囲の友達への教師の啓発が重要と考えられた。また発達段階には様々な過程があり, 個々の難聴原因, 家庭環境なども配慮したライフステージに応じた対応が必要と考えられた。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.60.143