遺伝子治療の展望

遺伝子治療の概念は, 時代とともに変わってきており, 技術の進歩に相まってこれからも大きく変わっていくものと思われる. 病因の解明という観点からは, 80年代に, 発癌遺伝子ウイルス遺伝子の活性化のメカニズムが, 明らかになることによって, 発癌やウイルス疾患までも個々の細胞における遺伝子疾患としてとらえられ遺伝子治療の対象疾患として考えられるようになった. しかし, 遺伝子治療が可能となった一番の理由は, 遺伝子導入の技術が進歩してきたことであろう. 任意の遺伝子をほ乳細胞に発現させる方法は, ウイルス学的手段, 物理的手段, 化学的手段と大きく三つに分けられ, 各方法とも近年改良が行われ使...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 41; no. 5; pp. 472 - 474
Main Author 恵美, 宣彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 1995
日本輸血学会
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ISSN0546-1448
1883-8383
DOI10.3925/jjtc1958.41.472

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Summary:遺伝子治療の概念は, 時代とともに変わってきており, 技術の進歩に相まってこれからも大きく変わっていくものと思われる. 病因の解明という観点からは, 80年代に, 発癌遺伝子ウイルス遺伝子の活性化のメカニズムが, 明らかになることによって, 発癌やウイルス疾患までも個々の細胞における遺伝子疾患としてとらえられ遺伝子治療の対象疾患として考えられるようになった. しかし, 遺伝子治療が可能となった一番の理由は, 遺伝子導入の技術が進歩してきたことであろう. 任意の遺伝子をほ乳細胞に発現させる方法は, ウイルス学的手段, 物理的手段, 化学的手段と大きく三つに分けられ, 各方法とも近年改良が行われ使いやすくなっている. 化学的手段としては, リピッド, 燐酸カルシウム, DNA-蛋白複合体を用いた方法が発表されており, 導入細胞に選択性を持たせる方法も示されている. 物理的手段としては, マイクロインジェクション, パーティクルガン, エレクトロポレーションなどがあげられる. 直接細胞に遺伝子を入れるので細胞選択性はなく, 障害性がつよいが, よりよい機器の開発によって容易になってきている. ウイルスを用いた方法は, ウイルスの細胞に感染する生活環を利用して任意の遺伝子を細胞に導入する. ウイルスの種類によりアデノウイルスベクター, アデノアソシエイトウイルスベクター, レトロウイルスベクターなどが考えられているが, 多くの遺伝子治療プロトコールに採用されているレトロウイルスベクターを中心に述べる.
ISSN:0546-1448
1883-8383
DOI:10.3925/jjtc1958.41.472