脳虚血症状で発症した急性大動脈解離の2症例

要旨:脳卒中診療において脳虚血症状で発症した急性大動脈解離を鑑別することは,単に致死的疾患である大動脈解離を正しく診断することだけでなく,不適切なrt-PA静注療法を避けるといった点で非常に重要である.脳虚血症状を伴う急性大動脈解離は,頻度は低いが,意識障害や失語症といった神経症状を伴い,脳卒中疑いで搬送される可能性がある.大動脈解離は解離部位に応じて非特異的で多彩な症状を呈しうる.胸背部痛の訴えがなく脳虚血症状で発症した急性大動脈解離を見逃さないために,血圧低値や左右差,胸部X線の縦郭拡大,Dダイマー高値といった急性大動脈解離の臨床像を理解しておく必要がある.補助的画像検査の中で,頸部MRA...

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Published in脳卒中 Vol. 43; no. 3; pp. 235 - 239
Main Authors 内田, 貴範, 越阪部, 学, 東田, 哲博, 金澤, 隆三郎, 高橋, 祐一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 2021
日本脳卒中学会
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ISSN0912-0726
1883-1923
DOI10.3995/jstroke.10810

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Summary:要旨:脳卒中診療において脳虚血症状で発症した急性大動脈解離を鑑別することは,単に致死的疾患である大動脈解離を正しく診断することだけでなく,不適切なrt-PA静注療法を避けるといった点で非常に重要である.脳虚血症状を伴う急性大動脈解離は,頻度は低いが,意識障害や失語症といった神経症状を伴い,脳卒中疑いで搬送される可能性がある.大動脈解離は解離部位に応じて非特異的で多彩な症状を呈しうる.胸背部痛の訴えがなく脳虚血症状で発症した急性大動脈解離を見逃さないために,血圧低値や左右差,胸部X線の縦郭拡大,Dダイマー高値といった急性大動脈解離の臨床像を理解しておく必要がある.補助的画像検査の中で,頸部MRAは,脳梗塞の病態評価に有用である一方で,大動脈解離の補助的検査にもなり得る検査である.胸痛を伴わずに脳虚血症状で発症し,最終的に急性大動脈解離の診断に至った2例を文献的考察を交えて報告する.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.10810