けいれん性音声障害の外科的治療 : その概念と手技

「はじめに」けいれん性音声障害は難治性音声障害の一つで病因, 診断, 治療の何れをとっても確立したものは無い. 歴史的には, 心因性と考えられ病名も緊張性音声障害spastic dysphoniaといわれたが, 心理療法, 音声訓練などが全く無効な事から, focal dystonia病巣性ジストニア(筋緊張異常)の一つとして, けいれん性音声障害またはけいれん性発声障害"spasmodic dysphonia", SDと略す)と云われる様になった. 治療もDedoが反回神経の切断を行い1), ある程度の効果を得, 一時は第1選択の治療とされたが, その後Alonsoら2)...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in喉頭 Vol. 12; no. 1; pp. 26 - 30
Main Authors 一色, 信彦, 山本, ゆき子, 前田, 秀夫, 大森, 孝一, 土師, 知行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本喉頭科学会 2000
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:「はじめに」けいれん性音声障害は難治性音声障害の一つで病因, 診断, 治療の何れをとっても確立したものは無い. 歴史的には, 心因性と考えられ病名も緊張性音声障害spastic dysphoniaといわれたが, 心理療法, 音声訓練などが全く無効な事から, focal dystonia病巣性ジストニア(筋緊張異常)の一つとして, けいれん性音声障害またはけいれん性発声障害"spasmodic dysphonia", SDと略す)と云われる様になった. 治療もDedoが反回神経の切断を行い1), ある程度の効果を得, 一時は第1選択の治療とされたが, その後Alonsoら2)により再発が多い事が報告されて以来漸次, 廃れていった. それに代わり神経筋接合部におけるイムパルス伝達機構をブロックする薬物Botulinum toxinが既に眼瞼痙攣に用いられていたが, SDにも応用され, 有効なのは6ケ月前後で再注射が必要という不便さは有るものの, 手術が不要で, 神経切断などの恒久的障害を残さない利点も有り, 今や第1選択の治療として一般化している3,4). 筆者はSDけいれん性音声障害のメカニカルレベルでの本態が多くの場合声門の過閉鎖にあると考え, 声門を開大する手術(甲状軟骨形成術2型)を3症例に行い, 極めて良好な結果を得た. 本疾患は病歴, 音声の特徴, 症状, 所見などが症例毎に異なる点が多い. 他の3例では手術の適応について検討中である.
ISSN:0915-6127
2185-4696
DOI:10.5426/larynx1989.12.1_26