当院補聴器外来における老人性難聴に対する補聴器適合の現況

要旨: 当院は, 耳鼻咽喉科一般診療に加え, 聞こえや言葉の遅れに対する専門外来を併設したクリニックとして, 平成26年6月に開院した。本報告では, 平成26年6月から平成27年6月までの期間に, 補聴器相談目的で受診した高齢者94例の補聴器適合の現況と, 購入後の経過について報告する。対象者の平均年齢は, 78.4歳 (±3.5) であった。94例中71例は補聴器購入に至り (以下補聴器購入群と示す), 23例は補聴器購入に至らなかった (以下, 補聴器非購入群と示す)。補聴器購入群と非購入群で聴力像を比較した。補聴器購入群における, 良聴耳の平均聴力レベルは, 52.1dB (±6.3)...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 59; no. 2; pp. 141 - 150
Main Authors 水谷, 清隆, 長井, 今日子, 千代田, 朋子, 木村, 奈々子, 木暮, 由季, 鈴木, 哲, 戸蒔, 健一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 28.04.2016
日本聴覚医学会
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ISSN0303-8106
1883-7301
DOI10.4295/audiology.59.141

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Summary:要旨: 当院は, 耳鼻咽喉科一般診療に加え, 聞こえや言葉の遅れに対する専門外来を併設したクリニックとして, 平成26年6月に開院した。本報告では, 平成26年6月から平成27年6月までの期間に, 補聴器相談目的で受診した高齢者94例の補聴器適合の現況と, 購入後の経過について報告する。対象者の平均年齢は, 78.4歳 (±3.5) であった。94例中71例は補聴器購入に至り (以下補聴器購入群と示す), 23例は補聴器購入に至らなかった (以下, 補聴器非購入群と示す)。補聴器購入群と非購入群で聴力像を比較した。補聴器購入群における, 良聴耳の平均聴力レベルは, 52.1dB (±6.3) (四分法) で, 検査語表 57-S を用いた平均裸耳最高語音明瞭度は, 61.6% (±15.7) であった。補聴器非購入群の良聴耳の平均聴力レベル (四分法) は, 48.6dB (±5.3) で, 平均裸耳最高語音明瞭度は, 67.1% (±10.7) であり, 両者の聴力像の比較では, 有意差を認めなかった。  ところが,「きこえについての質問紙 (補聴器適合検査の指針2008より引用)」による日常生活での聞こえに関する主観的評価では, 購入群の方が, 非購入群と比較し不良であった。また, 補聴器購入群の購入理由の多くは, 趣味の際の会話聴取改善であった。趣味をもつことで, 社会と積極的に関わるため, 補聴器装用の必要性が高く, 補聴器購入に至ったと考えられた。   高齢者に対する補聴器適合では,「慣れ」の時間を考慮した手順が重要である。また, 補聴器購入後も定期的な補聴効果や補聴器の装用状況の確認, 補聴器の微調整を行うなど, 継続的なカウンセリング体制の整備により, 補聴器に対する満足度の改善や日常生活における補聴器装用による聴覚活用の向上に貢献すると考えられた。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.59.141