「健康な街」の条件—場所に着目した健康行動と社会関係資本の分析

『1. はじめに』 「1.1. 社会関係資本と健康行動」 人々の協調行動を促進するコミュニティの関係性を総称する概念として, 社会関係資本(social capital)への注目が高まっている. 政治学者パットナムの良く知られた定義によれば, 社会関係資本とは人々の協調行動を促す信頼・規範・ネットワークといった社会組織の特徴を意味する概念であるとされ, 防犯や教育, 経済成長から民主主義に至るまで, 社会の諸側面に対する影響が議論されている(パットナム, 2001, 2006). 公衆衛生学や社会疫学では, 健康を規定する社会的な因子の1つとして, 社会関係資本が健康に好ましい影響を与えるかど...

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Published in行動計量学 Vol. 37; no. 1; pp. 53 - 67
Main Authors 埴淵, 知哉, 近藤, 克則, 平井, 寛, 村田, 陽平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本行動計量学会 2010
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ISSN0385-5481
1880-4705
DOI10.2333/jbhmk.37.53

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Summary:『1. はじめに』 「1.1. 社会関係資本と健康行動」 人々の協調行動を促進するコミュニティの関係性を総称する概念として, 社会関係資本(social capital)への注目が高まっている. 政治学者パットナムの良く知られた定義によれば, 社会関係資本とは人々の協調行動を促す信頼・規範・ネットワークといった社会組織の特徴を意味する概念であるとされ, 防犯や教育, 経済成長から民主主義に至るまで, 社会の諸側面に対する影響が議論されている(パットナム, 2001, 2006). 公衆衛生学や社会疫学では, 健康を規定する社会的な因子の1つとして, 社会関係資本が健康に好ましい影響を与えるかどうかについて, 数多くの研究が進められてきた(Islam, Merlo, Kawachi, Lindstrom, & Gerdtham, 2006;Kawachi, Subramanian, & Kim, 2008). 社会関係資本論には, それを個人レベルの属性とみなすか, 集団(地域・職域など)レベルの特性と考えるのか(あるいはその両方とするのか), 概念的にも分析的にも異なる立場があるが, 健康分野ではそのいずれについても膨大な研究蓄積がある.
ISSN:0385-5481
1880-4705
DOI:10.2333/jbhmk.37.53