ATP合成酵素から進化したマイコプラズマ滑走モーターの構造
「1. はじめに」体長1μmにも満たない魚病原菌マイコプラズマ・モービレ(以下モービレ)は, シアル酸オリゴ糖が存在する固体表面において滑るように動く滑走運動をみせる. 滑走の速度は秒速約4μmであり, 1秒間で体長の5-6倍の距離を移動しているため, 光学顕微鏡下で動いていることをはっきりと認識することができる. モービレの滑走運動に必要な装置は菌体の突起構造に存在し, 表面装置と内部装置の2つに大別される. 表面装置は細胞の突起を覆う膜タンパク質複合体の集まりであり, あしタンパク質がシアル酸オリゴ糖をつかんで引っ張ることで菌体が前進する. 一方, 菌体内部に存在する内部装置はくらげ状の形...
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Published in | 生物物理 Vol. 63; no. 5; pp. 270 - 272 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本生物物理学会
2023
日本生物物理学会 |
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ISSN | 0582-4052 1347-4219 |
DOI | 10.2142/biophys.63.270 |
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Summary: | 「1. はじめに」体長1μmにも満たない魚病原菌マイコプラズマ・モービレ(以下モービレ)は, シアル酸オリゴ糖が存在する固体表面において滑るように動く滑走運動をみせる. 滑走の速度は秒速約4μmであり, 1秒間で体長の5-6倍の距離を移動しているため, 光学顕微鏡下で動いていることをはっきりと認識することができる. モービレの滑走運動に必要な装置は菌体の突起構造に存在し, 表面装置と内部装置の2つに大別される. 表面装置は細胞の突起を覆う膜タンパク質複合体の集まりであり, あしタンパク質がシアル酸オリゴ糖をつかんで引っ張ることで菌体が前進する. 一方, 菌体内部に存在する内部装置はくらげ状の形をしており, くらげの触手に相当する鎖状構造が傘の骨のように広がって表面装置を裏打ちしている. 鎖状構造はATPase活性をもつことから, 滑走のための力を発生するモーターであると考えられている. |
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ISSN: | 0582-4052 1347-4219 |
DOI: | 10.2142/biophys.63.270 |