Perfusion-diffusion mismatchを示す発症3時間以降の急性中大脳動脈閉塞症に対するアルテプラーゼ静注療法の有効性および安全性
【背景および目的】本邦においては,脳梗塞急性期に対するアルテプラーゼ0.6 mg/kgの静注療法は,発症3時間以内に承認されている.しかし,その恩恵を受ける患者の割合は少ない.発症3時間以降の症例に対し,アルテプラーゼ0.9 mg/kgやデスモテプラーゼの静注療法が有効であると示唆する報告が多くなされている.以前われわれは,アルテプラーゼ0.6 mg/kg静注療法にて発症3時間以内の急性中大脳動脈閉塞は,高い再開通率が得られることを報告した.このことはJ-ACT2でも確認された.今回の研究は,発症3時間以降のperfusion-diffusion mismatchを示す急性中大脳動脈閉塞症に対...
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Published in | 脳卒中 Vol. 33; no. 2; pp. 217 - 225 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本脳卒中学会
2011
日本脳卒中学会 |
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Summary: | 【背景および目的】本邦においては,脳梗塞急性期に対するアルテプラーゼ0.6 mg/kgの静注療法は,発症3時間以内に承認されている.しかし,その恩恵を受ける患者の割合は少ない.発症3時間以降の症例に対し,アルテプラーゼ0.9 mg/kgやデスモテプラーゼの静注療法が有効であると示唆する報告が多くなされている.以前われわれは,アルテプラーゼ0.6 mg/kg静注療法にて発症3時間以内の急性中大脳動脈閉塞は,高い再開通率が得られることを報告した.このことはJ-ACT2でも確認された.今回の研究は,発症3時間以降のperfusion-diffusion mismatchを示す急性中大脳動脈閉塞症に対するアルテプラーゼ0.6 mg/kg静注療法が有効かつ安全かを明らかにする目的で行われた前向き臨床研究である.【方法】脳梗塞急性期の診断は,MRI(diffusion,FLAIR,T2*,T2),MRAを用いた.発症3時間以降の症例では,diffusion MRIにて異常信号域が中大脳動脈領域の1/3以内で,かつperfusion-diffusion mismatchを20%以上認める症例に対し,アルテプラーゼ0.6 mg/kg静注療法を行った.発症3時間以内と3時間以降のアルテプラーゼ静注療法を行った中大脳動脈閉塞症例において,患者背景,再開通の有無,24時間後の早期臨床改善,3カ月後の転帰良好(mRS 0,1),72時間以内の症候性頭蓋内出血,3カ月後の死亡率を比較した.【結果】3時間以内で投与した症例数が53,3時間以降で投与した症例数が10.前者と後者を比較すると,再開通率(52.8%対70.0%),24時間後の早期臨床改善(41.5%対60.0%),3カ月後の転帰良好(37.7%対50.0%),症候性頭蓋内出血(0%対0%),3カ月後の死亡率(1.9%対0%)といずれも同等の結果であった.【結論】Perfusion-diffusion mismatchを示す発症3時間以降の急性中大脳動脈閉塞に対する0.6 mg/kg静注療法は,3時間以内で治療された症例と同等に有効かつ安全であることが示唆された.今後症例を重ねて検討する必要がある. |
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ISSN: | 0912-0726 1883-1923 |
DOI: | 10.3995/jstroke.33.217 |