心室筋内向き整流カリウム電流と細胞内マグネシウムイオン
I. はじめに 心室筋の静止電位は約-90mVに維持されており, 生理的には自発的に脱分極することはない. この電気生理学的性質はK+の平衡電位(Ek)付近の膜電位で流れる内向き整流K+電流(Ik1)の存在による. IK1が流れるK+チャネルは, 活動電位が発生し膜が脱分極すると急速に閉じ, 活動電位の間にK+濃度勾配に従って外向きのK+電流が流れだすのを防いでいる(図1A). この性質は心筋活動電位の長いプラトー相がわずかな内向き電流によって維持されることを可能にし, 活動電位発生に伴うエネルギー需要を減少させる重要な役割をになう1). 再分極が始まると, 膜電位がEKに近づくにつれてIK1...
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Published in | 心電図 Vol. 28; no. 3; pp. 235 - 241 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本不整脈心電学会
2008
日本心電学会 |
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ISSN | 0285-1660 1884-2437 |
DOI | 10.5105/jse.28.235 |
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Summary: | I. はじめに 心室筋の静止電位は約-90mVに維持されており, 生理的には自発的に脱分極することはない. この電気生理学的性質はK+の平衡電位(Ek)付近の膜電位で流れる内向き整流K+電流(Ik1)の存在による. IK1が流れるK+チャネルは, 活動電位が発生し膜が脱分極すると急速に閉じ, 活動電位の間にK+濃度勾配に従って外向きのK+電流が流れだすのを防いでいる(図1A). この性質は心筋活動電位の長いプラトー相がわずかな内向き電流によって維持されることを可能にし, 活動電位発生に伴うエネルギー需要を減少させる重要な役割をになう1). 再分極が始まると, 膜電位がEKに近づくにつれてIK1チャネルは開き, 外向き電流が増加する(図1B). それによって心室筋活動電位終盤の速やかな再分極を引き起こすこともIK1の重要な機能である1). IK1のプルキンエ線維における存在がDenis Nobleによって見出されたときから, IK1は時間依存性を示さない電流, すなわち背景電流(background current)として記載されてきた(IK1の名はNobleが初期に膜のK+コンダクタンスを時間非依存性成分と時間依存性成分に分け, それぞれGK1, GK2とよんだこと2)に由来するため, 心筋分野における独自のよび名である). |
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ISSN: | 0285-1660 1884-2437 |
DOI: | 10.5105/jse.28.235 |