食品製造施設の定着要因としてのバイオフィルム形成

「1. はじめに」私たちの身の回りには様々な種類の微生物が存在するが, これらの多くは単独でなく何らかの物体に付着して生息している. このような微生物の存在形態の一つとしての"バイオフィルム"が1980年代後半から注目を集めるようになった. バイオフィルム(BF)とは, 微生物が様々な物質表面に付着・増殖して菌体外多糖類(EPS;Extracellular Polymeric Substances)を分泌し, それらに取り囲まれて存在する集合体のことを指す. BFは, 川や池の水辺, 台所のシンクやスポンジ, 風呂場や排水溝などに見られるぬめりや, 口の中の歯垢, 歯石など...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本食品微生物学会雑誌 Vol. 35; no. 3; pp. 122 - 126
Main Author 中村, 寛海
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本食品微生物学会 30.09.2018
Online AccessGet full text
ISSN1340-8267
1882-5982
DOI10.5803/jsfm.35.122

Cover

More Information
Summary:「1. はじめに」私たちの身の回りには様々な種類の微生物が存在するが, これらの多くは単独でなく何らかの物体に付着して生息している. このような微生物の存在形態の一つとしての"バイオフィルム"が1980年代後半から注目を集めるようになった. バイオフィルム(BF)とは, 微生物が様々な物質表面に付着・増殖して菌体外多糖類(EPS;Extracellular Polymeric Substances)を分泌し, それらに取り囲まれて存在する集合体のことを指す. BFは, 川や池の水辺, 台所のシンクやスポンジ, 風呂場や排水溝などに見られるぬめりや, 口の中の歯垢, 歯石などに代表される. BFは私たちにとって有害なものも有益なものもあり, 双方の分野で研究が進められている. 通常, 私たちは試験管等で細菌を培養し, 遊離状態のものについて様々な特性を調べる. しかしながら, (1)BF中の細菌は遊離したものではなく付着したものである, (2)BF中の細菌は単独でなく複数で共同体を形成する, ということを理解し, BF形成細菌は遊離状態の細菌とは全く異なった特性を有していることを認識する必要がある.
ISSN:1340-8267
1882-5982
DOI:10.5803/jsfm.35.122