未分化多形型肉腫に合併した多発脳塞栓症の1例

症例は73歳男性.ふらつきを主訴に救急搬送された.頭部MRIで大脳半球や小脳半球に散在性梗塞を認めた.各種塞栓源検索では明らかな原因は指摘できなかったが,既往に右上腕骨未分化多形肉腫があり,入院中の体幹部CTにて多発遠隔転移が疑われ,本例は癌関連血栓症(CAT)による脳梗塞と考えられた.ヘパリンカルシウム皮下注射を開始し,再発なく経過していたが,直接作用型経口抗凝固薬に切り替えてから2週間後に塞栓性脳梗塞を再発した.CATは,腺癌に多いとされ,腺癌細胞が分泌するムチンにより形成される微小血小板血栓が関与しているといわれている.しかし,腺癌以外の悪性腫瘍によるCATの報告も散見され,特に,遠隔転...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in脳卒中 Vol. 46; no. 2; pp. 168 - 173
Main Authors 金丸, 拓也, 木戸, 俊輔, 阿部, 新, 大久保, 誠二, 木村, 和美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 2024
日本脳卒中学会
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:症例は73歳男性.ふらつきを主訴に救急搬送された.頭部MRIで大脳半球や小脳半球に散在性梗塞を認めた.各種塞栓源検索では明らかな原因は指摘できなかったが,既往に右上腕骨未分化多形肉腫があり,入院中の体幹部CTにて多発遠隔転移が疑われ,本例は癌関連血栓症(CAT)による脳梗塞と考えられた.ヘパリンカルシウム皮下注射を開始し,再発なく経過していたが,直接作用型経口抗凝固薬に切り替えてから2週間後に塞栓性脳梗塞を再発した.CATは,腺癌に多いとされ,腺癌細胞が分泌するムチンにより形成される微小血小板血栓が関与しているといわれている.しかし,腺癌以外の悪性腫瘍によるCATの報告も散見され,特に,遠隔転移を有する症例において血栓症のリスクが増大することが知られている.遠隔転移を伴う悪性腫瘍患者が塞栓性脳梗塞を起こした際は,腺癌でなくても本症例のように癌関連血栓症の可能性を念頭に検索する必要がある.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.11179