蝸牛障害・保護メカニズムに関する基礎的検討

要旨 : 様々な蝸牛障害において蝸牛においては障害を進行する機序と抑制する機序が存在する。障害進行として活性酸素やグルタミン酸の関与が確認されており, 動物実験において蝸牛虚血再灌流障害や薬剤性障害等で得られた知見を概説した。グルタミン酸による神経興奮毒性は蝸牛求心性神経において顕著に認められる。活性酸素による障害は有毛細胞を中心に惹起される。有毛細胞では活性酸素は各種キナーゼ経路を活性化し, さらにカスパーゼ活性化をきたすことにより有毛細胞のアポトーシスを生じる。また活性酸素については内有毛細胞のリボンシナプス障害もきたすことから, hidden hearing loss を生じる原因となる...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 67; no. 2; pp. 115 - 120
Main Author 田渕, 経司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 28.04.2024
日本聴覚医学会
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Summary:要旨 : 様々な蝸牛障害において蝸牛においては障害を進行する機序と抑制する機序が存在する。障害進行として活性酸素やグルタミン酸の関与が確認されており, 動物実験において蝸牛虚血再灌流障害や薬剤性障害等で得られた知見を概説した。グルタミン酸による神経興奮毒性は蝸牛求心性神経において顕著に認められる。活性酸素による障害は有毛細胞を中心に惹起される。有毛細胞では活性酸素は各種キナーゼ経路を活性化し, さらにカスパーゼ活性化をきたすことにより有毛細胞のアポトーシスを生じる。また活性酸素については内有毛細胞のリボンシナプス障害もきたすことから, hidden hearing loss を生じる原因となる。蝸牛障害抑制機序については脂質メディエータの影響について述べた。蝸牛障害時にスフィンゴミエリンからセラミド-1-リン酸 (C1P), スフィンゴシン-1-リン酸 (S1P) が産生され, 内因性細胞保護機序として機能する。また女性ホルモンであるエストロゲンについても蝸牛保護作用が認められる。蝸牛障害時に障害性また保護性の因子が蝸牛内で機能し, 有毛細胞の最終的な生死の決定に重要な役割を果たしている。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.67.115