当事者ニーズに基づいた聞き取り困難症 (LiD) / 聴覚情報処理障害 (APD) 研究の現状と展望

要旨 : 純音聴力検査では異常を認めないにも関わらず, 騒音下や複数音声下の聞き取り困難を訴える当事者が増加している。このような状態は, 聴覚情報処理障害 (APD) と呼ばれる。聴覚閾値は正常であるが中枢性聴覚情報処理が困難である状態とされてきた。本邦では, APD の診断基準は無く, 医師にも当事者にも問題となっていた。われわれは, 2021年度 AMED 研究「当事者ニーズに基づいた聴覚情報処理障害診断と支援の手引きの開発」を受託し研究を行っている。その過程で, APD 当事者の多くが, 聴覚情報処理以外の注意, 認知の問題, 言語の問題など関連する症状を持っている可能性が明らかになり,...

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Published inAUDIOLOGY JAPAN Vol. 66; no. 6; pp. 511 - 522
Main Author 阪本, 浩一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本聴覚医学会 28.12.2023
日本聴覚医学会
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Summary:要旨 : 純音聴力検査では異常を認めないにも関わらず, 騒音下や複数音声下の聞き取り困難を訴える当事者が増加している。このような状態は, 聴覚情報処理障害 (APD) と呼ばれる。聴覚閾値は正常であるが中枢性聴覚情報処理が困難である状態とされてきた。本邦では, APD の診断基準は無く, 医師にも当事者にも問題となっていた。われわれは, 2021年度 AMED 研究「当事者ニーズに基づいた聴覚情報処理障害診断と支援の手引きの開発」を受託し研究を行っている。その過程で, APD 当事者の多くが, 聴覚情報処理以外の注意, 認知の問題, 言語の問題など関連する症状を持っている可能性が明らかになり, APD をより広く捉えて, 聞き取り困難症 (Listening difficulties: LiD) と称する方が望ましいと考えた。また診断の目安として, 聞き取り困難の自覚症状, 純音聴力検査正常, 語音明瞭度正常, 聴覚情報処理検査1項目以上, 平均値-2SD 以下を提唱した。AMED 研究の中間報告と当院の成績からわれわれの考え方, 診断に至る過程を解説した。
ISSN:0303-8106
1883-7301
DOI:10.4295/audiology.66.511