腸管出血性大腸菌食中毒―最近10年の発生状況および課題と対策

「1. はじめに」腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症は, 溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症を引き起こし, 死に至ることがある. 主な感染経路は, EHECに汚染された食品や水からの経口感染である. たびたび大規模発生や広域発生が起こることから, EHEC食中毒の社会的関心は, 食中毒のなかでも特に高いと言える. 近年, 食中毒は事件数で1,000件, 患者数が2万人前後で下げ止まっているとされているが, 2018年は事件数が1,330件と最近10年で最も多かった. EHEC食中毒も細菌を病因物質とする中では, カンピロバクターに次いで第2位(32件)と多かった, 原因食品は...

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Published in日本食品微生物学会雑誌 Vol. 37; no. 3; pp. 112 - 118
Main Author 斎藤, 章暢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本食品微生物学会 30.09.2020
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ISSN1340-8267
1882-5982
DOI10.5803/jsfm.37.112

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Summary:「1. はじめに」腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症は, 溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症を引き起こし, 死に至ることがある. 主な感染経路は, EHECに汚染された食品や水からの経口感染である. たびたび大規模発生や広域発生が起こることから, EHEC食中毒の社会的関心は, 食中毒のなかでも特に高いと言える. 近年, 食中毒は事件数で1,000件, 患者数が2万人前後で下げ止まっているとされているが, 2018年は事件数が1,330件と最近10年で最も多かった. EHEC食中毒も細菌を病因物質とする中では, カンピロバクターに次いで第2位(32件)と多かった, 原因食品は, 不明なことが多いが, 主な保菌動物が牛であることから, 牛肉類の報告は多い. また, 食肉ほど多くはないが, 野菜類を原因食品とする事例もたびたび報告されている.
ISSN:1340-8267
1882-5982
DOI:10.5803/jsfm.37.112