SRPを行ったことで行動変容の見られた自閉症スペクトラム患者の14年間の治療経験

本報は, 長期間ホームケアの確立が困難で, 歯科診療に対しても不適応行動の見られた自閉症スペクトラム患者に対し, スケーリング・ルートプレーニング(SRP)を行ったことで, 患者や保護者の行動変容につながった症例について報告する。患者は25歳の男性で, 歯肉からの出血を主訴に当院に来院した。口腔内は全顎的に多量のプラークおよび歯石が沈着し, 歯肉の著しい発赤と腫脹が認められた。初診から10年間は, 患者の歯科治療に対する不適応行動や歯科衛生士の歯周治療に対する経験不足から, 歯周疾患を診断するための検査が行えなかった。この間は, 口腔衛生指導, 歯肉縁上スケーリングとプロフェッショナルメカニカ...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 52; no. 3; pp. 245 - 254
Main Authors 吉岡, 真由美, 関野, 仁
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本歯周病学会 2010
日本歯周病学会
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ISSN0385-0110
1880-408X
DOI10.2329/perio.52.245

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Summary:本報は, 長期間ホームケアの確立が困難で, 歯科診療に対しても不適応行動の見られた自閉症スペクトラム患者に対し, スケーリング・ルートプレーニング(SRP)を行ったことで, 患者や保護者の行動変容につながった症例について報告する。患者は25歳の男性で, 歯肉からの出血を主訴に当院に来院した。口腔内は全顎的に多量のプラークおよび歯石が沈着し, 歯肉の著しい発赤と腫脹が認められた。初診から10年間は, 患者の歯科治療に対する不適応行動や歯科衛生士の歯周治療に対する経験不足から, 歯周疾患を診断するための検査が行えなかった。この間は, 口腔衛生指導, 歯肉縁上スケーリングとプロフェッショナルメカニカルトゥースクリーニング(PMTC)を継続したが, 歯周疾患が進行している徴候が認められた。担当医の変更に伴い, 行動変容法を応用しながら検査を行い, 治療方針を再検討した。SRPを行った結果, 歯周組織は改善し, 患者の歯科診療に対する協力性の向上や, 口腔内の自覚症状に対する自発的な要求の発現などの行動変容が認められた。また, 保護者によるブラッシングに対しても不適応行動が軽減したことで, 保護者も積極的に患者に関わるようになった。 自閉症スペクトラム患者における歯周病の症状の改善は, 患者の日常生活における行動変容につながり, また, 保護者の意識や行動に対しても影響を与えることが示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)52(3) : 245-254, 2010
ISSN:0385-0110
1880-408X
DOI:10.2329/perio.52.245