哺乳類HSP40の発見の経緯とその後の進展

1990年に,哺乳類の新規な熱ショックタンパク質として分子量約40 kDaのHSP40が見出された.その後,HSP40の部分的アミノ酸配列およびcDNAのクローニングにより,HSP40はバクテリアDnaJの相同体であることが判明した.HSP40はHSP70のコシャペロンとしてタンパク質の折りたたみや,熱によるタンパク質の変性を防ぐとともに熱で変性したタンパク質の回復の促進に関与していることがわかってきた.また,HSP70とHSP40は共同して神経変性疾患に特有のタンパク質凝集体の形成を抑制し,さらに温度感受性変異タンパク質の活性回復にも機能していることも判明した.現在哺乳類では49個のHSP4...

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Published inThermal Medicine Vol. 39; no. 2; pp. 3 - 19
Main Author 大塚, 健三
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本ハイパーサーミア学会 30.06.2023
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ISSN1882-2576
1882-3750
DOI10.3191/thermalmed.39.3

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Summary:1990年に,哺乳類の新規な熱ショックタンパク質として分子量約40 kDaのHSP40が見出された.その後,HSP40の部分的アミノ酸配列およびcDNAのクローニングにより,HSP40はバクテリアDnaJの相同体であることが判明した.HSP40はHSP70のコシャペロンとしてタンパク質の折りたたみや,熱によるタンパク質の変性を防ぐとともに熱で変性したタンパク質の回復の促進に関与していることがわかってきた.また,HSP70とHSP40は共同して神経変性疾患に特有のタンパク質凝集体の形成を抑制し,さらに温度感受性変異タンパク質の活性回復にも機能していることも判明した.現在哺乳類では49個のHSP40相同体が判明しているが,HSP40という言葉はファミリーネームとして用いられている.本総説では,HSP40の発見の経緯とその後の進展について解説する.またこの総説は筆者の個人的な研究の歴史について述べているが,熱ショックタンパク質やハイパーサーミアの研究分野の背景にも言及している.
ISSN:1882-2576
1882-3750
DOI:10.3191/thermalmed.39.3