妊娠中の症状の顕在化より2週間で妊産婦死亡に至った肺癌の一例

<症例>30歳代,2妊1産,アジア外国籍.初期より当院で妊婦健診施行していた.妊娠16週頃から咳嗽が出現,近医内科を受診して,麦門冬湯,デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和,ブロムヘキシン塩酸塩,ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物配合を処方されていたが改善がないため,妊娠20週に当院呼吸器内科へ受診となった.逆流性食道炎も考えられ,プロトンポンプ阻害薬が追加投与されたが改善を認めず,妊娠24週に呼吸困難感を訴えて低酸素状態のため即日入院となった.胎児は正常発育で異常所見を認めなかった.胸部X線検査で両側肺野に粒状影が多発しており,胸部単純CT検査で両側肺にびまん性多発粒状影,左下葉に...

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Published in日本周産期・新生児医学会雑誌 Vol. 56; no. 3; pp. 507 - 511
Main Authors 倉﨑, 昭子, 近藤, 春裕, 長谷川, 潤一, 西村, 陽子, 鈴木, 直, 本間, 千夏, 岩端, 秀之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本周産期・新生児医学会 2020
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ISSN1348-964X
2435-4996
DOI10.34456/jjspnm.56.3_507

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Summary:<症例>30歳代,2妊1産,アジア外国籍.初期より当院で妊婦健診施行していた.妊娠16週頃から咳嗽が出現,近医内科を受診して,麦門冬湯,デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和,ブロムヘキシン塩酸塩,ブデソニド・ホルモテロールフマル酸塩水和物配合を処方されていたが改善がないため,妊娠20週に当院呼吸器内科へ受診となった.逆流性食道炎も考えられ,プロトンポンプ阻害薬が追加投与されたが改善を認めず,妊娠24週に呼吸困難感を訴えて低酸素状態のため即日入院となった.胎児は正常発育で異常所見を認めなかった.胸部X線検査で両側肺野に粒状影が多発しており,胸部単純CT検査で両側肺にびまん性多発粒状影,左下葉に浸潤影が認められた.粟粒結核も鑑別として考えられ,個室管理下でBiPAP装着して管理した.喀痰抗酸菌検査にて結核は否定されたが,喀痰細胞診でadenocarcinomaの診断となった.喀痰および血清EGFR遺伝子変異検査は陰性であった.酸素化が増悪したため,第5病日(妊娠25週)に全身麻酔下での緊急帝王切開を施行した.児は715g,Apgar score 2/4(1/5分),臍帯血ガスpH7.29であった.母体は気管挿管を継続したが,酸素化は不良であった.術後,CBDCA+PEM(80% dose)の化学療法を開始したが病勢が強く,第9病日に死亡した. <結語>肺癌の初期症状は,妊娠による不定愁訴や,感冒や喘息の症状と酷似しており,診断が遅れることがある.妊婦では放射線被曝の点などから検査が敬遠されがちであるが,有症状である場合は,積極的な精査を躊躇すべきではないと考えられた.
ISSN:1348-964X
2435-4996
DOI:10.34456/jjspnm.56.3_507